橋本幹彦 (国民民主党)

2026年4月2日・第221回国会 衆議院 本会議 第10号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 17 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 25 発言)

国民民主党・無所属クラブの橋本幹彦です。

私は、会派を代表して、ただいま議題となりました国家情報会議設置法案について、高市総理に質問します。(拍手)

本法案は、我が国のインテリジェンスに関する改革の一環として提出されています。そもそも、インテリジェンスとは、国と国民の安全を守るための施策の一つであり、安全保障の施策の証拠となる情報の収集、整理、分析及び活用を行うものです。安全保障のための施策は、時の政権の思いつきで行われるべきものではありません。的確な情報に基づき確かな施策を実行することは、複雑化する国際情勢において、国と国民の安全を守るために必須です。

しかしながら、我が国において情報収集活動はこれまで個別の政策に従属するものと位置づけられてきました。インテリジェンスコミュニティーのコアメンバーとされる省庁においても、警察庁は法執行政策のため、外務省は外交政策のため、防衛省は防衛政策のため、公安調査庁は団体規制のためといった、それぞれの所掌の中での情報収集にとどまっており、日本と世界全体を見渡し、国と国民の安全を守るために専らインテリジェンスを行う機関は存在しません。ゆえに、私も、抜本的なインテリジェンス改革は不可欠であると考えます。

我が国は、インテリジェンスをめぐる手痛い失敗を経験してきました。改革は過去の教訓に依拠して考えなければ、真に実効性のある対策を取ることができません。

昭和五十年代に立て続けに北朝鮮による拉致を許し、さらに、その認定までに多くの歳月を要した政府の対応は、インテリジェンスの活用に政治が失敗した例と言えます。

この失敗の教訓は何かと政府に尋ねると、拉致被害者全員の帰国が実現していない段階で明らかにすることは今後の対応に影響を及ぼしかねないとの答弁が繰り返されてきました。確かに、拉致被害者全員の帰国が実現していないという意味では継続中の事案です。他方で、政治とインテリジェンスの関係については、今日にも通底する教訓を秘めています。

この事案に関係した日本側の資料や知見が失われる前にこれらを整理し検証を行い、拉致被害者全員の帰国実現に支障を及ぼさぬ範囲でこれを国民に公表することが、インテリジェンス改革の出発点になるのではないでしょうか。民主主義を重んずる社会において、国民からの信頼なくして的確なインテリジェンスは成り立たないからです。

総理に伺います。国家情報会議を設置する今こそ、北朝鮮による拉致を結果として許した政府や政治の対応を始めとする我が国のインテリジェンスをめぐる失敗について、政府として歴史的な検証を行い、可能な範囲で国民に公表すべきではありませんか。

次に、総理のインテリジェンス改革の全体像について伺います。

高市総理が昨年十月に署名した自由民主党と日本維新の会との間の合意書をひもときますと、総合的なインテリジェンス改革として次の三点が明記されています。第一に、今国会において国家情報会議等を設置すること。これがただいま説明のあった法案です。第二に、来年度、令和九年度末までに独立した対外情報機関や情報要員の養成機関を創立すること。第三に、昨年、令和七年には、基本法、外国代理人登録法及びロビー活動公開法など関連法制について検討を開始し、速やかに法案を策定し成立させること。

これらが高市内閣におけるインテリジェンス改革の全貌であるとすれば、本法案の審議に当たり、総理から直接、国民の代表者が集う国会を通じて、その全体像を国民に説明していただく必要があります。

総理に伺います。本法案の先にある対外情報機関の創設や基本法等の法整備について、総理は、現在、いかなる展望と工程表をお持ちでしょうか。

適切なインテリジェンスは国民の利益を実現します。しかし、そのための所要の理念と留意点もあります。

国民民主党は、国民の人権と自由の尊重、国家の存立と主権の防衛、インテリジェンスの最前線で活動する者の保護という議論の三本柱を立て、有識者から三十時間ヒアリングして、昨年十一月、改革の全体像をプログラム規定とし、あわせて、その際の理念や留意点を明記したインテリジェンス法案を本院に提出しました。

インテリジェンス法案は、これまでのインテリジェンス改革やスパイ防止法をめぐる議論で光の当たらなかったこの三本柱に光を当て、声なき声を形にしたものです。我が国で初めて法案においてインテリジェンスを定義するとともに、国会による民主的統制や政治的中立の確保など、その実施に当たっての理念や留意点を明確にした画期的な立法です。

もし、政府・与党が真っ正面からインテリジェンス改革を行う覚悟があるのなら、理念と留意点も含め広く国民に理解を求めながら、堂々と議論を闘わせ、改革を進めるべきです。安全保障に右も左もありません。国民民主党は、真っ正面からインテリジェンス改革を訴え、その実現のために力を尽くします。国民とともに、真の改革を進めようではありませんか。

国家情報会議設置法案は、これから委員会に付託されることとなります。総理には、この充実した審査に協力することはもちろんのこと、総裁として充実した審査の実現を自民党に指示することを求めます。国民の理解と信頼なくして的確なインテリジェンスは決して成り立たないからです。

総理、国民民主党が提出したインテリジェンス法案の内容も踏まえながら、国会において熟議を尽くしていただけないでしょうか。

インテリジェンス法案に盛り込んだ留意点は、国家情報会議設置法案には十分に盛り込まれていません。インテリジェンス改革を行うに当たって特に重要と信ずるため、以下六点、質問します。

第一に、国会による民主的統制について伺います。

諸外国では、議会がインテリジェンス機関を監視する委員会を持つことが一般的です。例えば英国では、情報保安委員会が、情報機関の支出、運営、政策のみならず、作戦の精査や監督を行っています。

日本には、特定秘密保護法等の運用を常時監視する情報監視審査会が国会に設置されていますが、実際に開示される情報は限定的で、実態的な監視にはほど遠いとの指摘もあります。そもそも、情報監視審査会は、政府のインテリジェンス活動全般を監視する設計になっていません。

総理は、本年二月二十四日、本院において、小川淳也議員の質問に対して、基本方針の策定を通じて政府の情報活動が国民にとって理解しやすくなるよう努める旨を答弁しましたが、政府による一方的な説明のみでは、国会による民主的統制とは言えません。

総理に伺います。インテリジェンス改革に当たり、国会に対する定期報告や関係委員会の機能強化、第三者の関与による歴史的検証など、国会による民主的統制の枠組みをどのように想定されているでしょうか。既存の情報監視審査会の機能強化や対象拡大を含め、具体的な検討状況をお示しください。

第二に、インテリジェンスに対する歴史的な検証について伺います。

本法案は、会議に出席した大臣ら政治家に秘密保持義務を課しています。秘密保持は当然重要です。一方で、秘密を理由に意思決定のいきさつや失敗の教訓が永久に闇に葬られるなら、我が国の安全保障は長期的に弱体化します。過去の施策の検証ができず、国民からの信頼も失われるからです。

平成十五年、米英等の有志連合は、イラクが大量破壊兵器を保有しているとの誤った情報に基づき、イラク戦争を始めました。英国では後に、バトラー報告書によってこの失敗が厳しく検証され、インテリジェンス改革につながりました。

総理に伺います。歴史的検証の重要性について、いかにお考えですか。また、国家情報会議の議事運営について、会議録や議事要旨、決定文書の作成や保存をどのように担保するのか、作成された記録を将来の検証に資する形で、どの程度の期間、いかなる制度に基づいて管理するのか、公開可能な範囲で年次報告や適時開示など国民への説明を行う考えはあるか、お答えください。

第三に、インテリジェンスの政治化の防止です。

国家情報会議の議長は総理です。政治主導でインテリジェンスを意思決定につなぐ司令塔の強化は重要です。しかし、同時に、都合のよい情報だけが上がる、反対情報が握り潰されるといったインテリジェンスの政治化の危険も懸念しなければなりません。制度は、善意を前提にしてはなりません。悪用が困難な仕組みこそ、国民を守り、官僚を守り、現場の関係者を守るのです。

総理に伺います。インテリジェンス情報が政治的に中立であることを担保するために、例えば、分析部門の独立性確保、異論や反対見解の記録、重要判断のレビュー、政権交代時の継続性など、どのような制度設計を行いますか。国会による検証が可能となる制度の在り方について御説明ください。

第四に、客観性の担保です。

大川原化工機をめぐる冤罪事件は、法執行機関が立件という政策目的ありきで情報収集に走った結果起きた悲劇です。インテリジェンスを行うに当たっては、政策と情報収集との分離を徹底し、客観的な分析を担保しなければなりません。

総理に伺います。国家情報会議が扱う情報と、警察、検察の捜査情報、防衛政策、外交政策などの判断をどのように整理し、相互の不適切な干渉を防ぎ、検証可能性を確保しますか。大川原化工機事件の教訓を制度と人材教育にいかに反映させますか。

第五に、手法の拡充です。

インテリジェンスは、組織図を書き換えるだけでは強くなりません。公開情報、オシント、衛星情報などの画像情報、イミント、通信情報、シギント、そして人的情報、ヒューミントなど、多様な情報源や分析の質、そしてこれを支える人材が必要です。また、衛星情報、サイバー、経済安全保障、危機管理といった、分野横断の分析が今後ますます重要になることは言うまでもありません。

総理に伺います。インテリジェンス改革を通じて、各手法は具体的にどのように拡充され、インテリジェンス情報の質を向上させるのでしょうか。また、手法の拡充に当たって、職員に求められる資質としてどのような人物像を定め、いかなる倫理観を持たせるのでしょうか。

第六に、インテリジェンス関係者の安全の確保です。

特に、人的情報、ヒューミントに関わる要員は、その身を危険な現場にさらして国のために活動します。家族なども含めた彼らの安全を確保し、万が一の際の保護や補償を行う法的な枠組みを用意することは、国家の当然の責務です。

総理、インテリジェンス改革を通じて、現場で活動する最前線の職員の安全確保について、政府としてどのような保護規定や支援体制を想定しているのか、お答えください。

ところで、総理、この国家情報会議設置法案は、いわゆるスパイ防止法なのでしょうか。

昭和六十年、中曽根政権下において、自民党は議員立法として、国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案、いわゆるスパイ防止法案を本院に提出しました。最高刑は死刑又は無期懲役とされながらも、民主的統制の仕組みや、一定期間経過後に情報を公開する三十年ルールなどの歴史的検証の仕組みが抜け落ちていました。結果として、国民の知る権利を侵害するとして国内世論が沸騰し、廃案となりました。

我が国でスパイ防止法という言葉を用いるとき、国民の頭にはこのときのイメージがよぎります。確かに情報保全は重要です。しかし、スパイを防止するという言葉のニュアンスは、逮捕や摘発といった司法的措置、法執行的な措置が強くにじみます。真のインテリジェンスの目的は、単に国内でスパイを逮捕することではなく、国家の脅威となる情報を未然に察知し、安全保障の施策に生かすことにあります。

総理に伺います。今回設立される国家情報会議及び一連のインテリジェンス改革は、かつて国民の強い懸念を招いた昭和のスパイ防止法の焼き直しではなく、また罰則といった司法的措置を主眼とするものでもなく、我が国の安全保障のための施策とその客観的証拠の提供という、本来的な意味でのインテリジェンスの実現のための改革という理解でよいでしょうか。

また、一部に、日本にはスパイ防止法がないためにスパイ天国であるとの巷説がありますが、これには多分に誤解が含まれています。

我が国の情報保全法制としては、安全保障上の秘密保全については特定秘密保護法、装備品に関する情報保全については防衛産業基盤強化法、経済安全保障の観点については重要経済安保情報保護活用法が既に存在します。また、国の安全保障の施策ではありませんが、いわゆる産業スパイに関しても不正競争防止法や外為法が存在しています。

日本におけるスパイ防止や情報保全に関する法制の現状について、総理はいかに御認識されているでしょうか。自民党と日本維新の会との合意にあった基本法、外国代理人登録法及びロビー活動公開法の必要性と併せて御説明ください。

最後に、既存の業務の見直しについて伺います。

国家情報会議が設置された後、現在の内閣情報調査室が持つ情報収集機能はどのように継続、あるいは再編されるのでしょうか。国会に身を置いていると、内閣情報調査室の職員の活動をかいま見ることがあります。各政党や政治家がいかなる方針であるのかの情報を収集することは、国の安全保障を担保することとは趣旨が異なります。破壊活動防止法に基づく団体規制を行う公安調査庁を含め、既存の情報機関の役割や所掌の見直しは行われるのでしょうか。

既存のインテリジェンスコミュニティーをいかに再編し、機能を強化していくのか、総理の具体的なビジョンをお聞かせください。

インテリジェンスは、国と国民の安全を守る盾であると同時に、民主主義にとっては最も慎重な統制を要する強い力でもあります。過去の失敗の検証、教訓の導出と国民への説明、国会による民主的統制、政治的中立、国民の自由と権利の尊重、インテリジェンスの最前線で活動する者の保護、これらを伴わない改革は、インテリジェンスを盾ではなくおりにするものであり、むしろ国と国民の利益を損ねます。

議論の三本柱に基づき、声なき声に耳を傾ける困難な作業に本院が本腰を入れて取り組むことで、組織づくりにとどまらない、本質的なインテリジェンス改革が実現します。与野党を超えた熟議を強く訴え、私から総理に対する会派を代表した質問といたします。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕

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