若井先生、御質問いただき、ありがとうございます。
御質問いただいたのは、関連する二つの点に関するものであると承りました。
第一点目は、デジタル社会における個人の自律的意思や事前同意に頼る法制度の現代的な限界に関わる点、第二点目は、硬直的事前規制の現代的な課題について、イノベーションやAI産業の育成といった観点からお尋ねになったというふうに承りました。
まず、第二点目の方から端的にお答えいたしますと、硬直的な事前規制にこだわることは、イノベーションと法律のギャップを生みやすく、問題が大きいと考えます。
私の目からは、EUのAIアクトはまさにこの問題にはまってしまっているように思えます。AIアクトの元々の議論の段階では、生成AIやエージェンティックAIの社会実装といった事態は全く想定しておりませんでした。その結果として、例えば高リスクAIに関する人間による監視のような、解釈次第では認知的、技術的に相当無理のある規制が入ってしまっています。もちろん、技巧的な解釈を施すことでこうした規制を技術に適合させることも不可能ではありません。しかし、少なくとも、先走ってこうした規定を入れなければ生じなかったであろう技術開発に対する不要な萎縮効果を生んでしまっているということも事実だと思います。
残念ながら、事実として我が国のデータ利活用は余り進んでおらず、AI産業も世界をリードする立場にはありません。にもかかわらず、データやAIは我々の社会においてますます基盤的な役割を果たしつつあるわけです。このような状況下において、硬直的な事前規制にこだわり、イノベーションの機会を失し続けますと、個々人にとっても社会全体にとっても致命的な問題を引き起こしかねないと、このように考えてございます。
次に、第一点目の個人の自律的意思や事前同意に頼る法制度の限界についてでございます。
こうした法制度は、物語としては大変美しいのですが、デジタル化が進んで情報があふれる現代社会においては、個人に対する認知的な負荷が非常に大きく、法益保護の観点からは逆効果になる可能性もずっと指摘されているところでございます。
情報がデジタル化した現代においては、情報濫用等の現実的リスクは、どのような主体によって、どのような運用状況で、どのようなアーキテクチャーの下で情報が管理されるかに大きく左右されます。そして、これらの要素によるリスクの増減は、情報主体、データ主体の同意の有無とは直接的には関わりがありません。
したがって、現代においてリスク管理の観点から決定的に重要なのは、法、運用、技術、制度、運用、技術の適切な組合せによって、情報処理を実際に行う主体の下での情報濫用等のリスクが適正にコントロールできるかという点であり、また、適正なリスク管理を合理的費用で実現するためには、先端科学技術を適時に用いることができるように法制度を設計しなければなりません。
つまり、イノベーションの促進のみならず、法益保護、車の両輪とおっしゃられましたが、まさにそのとおりでございまして、法益保護、この観点からもアジャイルガバナンスのような方法論が求められていると、このように考えてございます。
以上です。
9黒黒田知宏京都大学医学部附属病院医療情報企画部教授
京都大学の黒田でございます。
今日は、このような意見を聞いていただける場を設けていただきまして、ありがとうございます。
私は、データサイエンス研究やAI開発を自分で行う研究者ではありませんが、四半世紀にわたって、主に京大病院の医療データ基盤整備に微力を尽くしてまいりました。
長年この仕事に携わってまいりますと、いろんなことを経験いたします。例えば、ある研究所の方が京大病院の医療情報を自由に使って新しい産業を創出しますと発表をどこかでなさったんだそうです。これを聞いた患者さんが、自分の個人情報を使って企業にもうけさせるなんて許せぬという電話を京都大学…
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松下新平(自民)
ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。
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若井敦子(自民)
自由民主党の若井敦子でございます。
参考人の皆様には、専門的知見から貴重なお話を伺いました。ありがとうございました。
一昨日の委員会の質疑、また、今日、先生方のお話をお伺いさせていただいて、かつて我が国が経験をした鎖国から開国へという大きな歴史的転換を思い浮かべました。かつて日本は、長く国を閉ざすことで一定の秩序を維持してきたわけです。しかしながら、世界の産業や技術、この情報の流れが大きく変化をする中で、そのままでは国力を維持し発展させていくことが厳しくなり、近代国家として新たな歩みを始めるために、国を開き、世界とつながるという大きな決断を行ったわけ…
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- (上の発言)
12稲稲谷龍彦京都大学大学院法学研究科教授
若井先生、御質問いただき、ありがとうございます。
御質問いただいたのは、関連する二つの点に関するものであると承りました。
第一点目は、デジタル社会における個人の自律的意思や事前同意に頼る法制度の現代的な限界に関わる点、第二点目は、硬直的事前規制の現代的な課題について、イノベーションやAI産業の育成といった観点からお尋ねになったというふうに承りました。
まず、第二点目の方から端的にお答えいたしますと、硬直的な事前規制にこだわることは、イノベーションと法律のギャップを生みやすく、問題が大きいと考えます。
私の目からは、EUのAIアクトはまさにこの問題にはまってしまっているように思えます。AIアクトの元々の議論の段階では、生成AIやエージェンティックAIの社会実装といった事態は全く想定しておりませんでした。その結果として、例えば高リスクAIに関する人間による監視のような、解釈次第では認知的、技術的に相当無理のある規制が入ってしまっています。もちろん、技巧的な解釈を施すことでこうした規制を技術に適合させることも不可能ではありません。しかし、少なくとも、先走ってこうした規定を入れなければ生じなかったであろう技術開発に対する不要な萎縮効果を生んでしまっているということも事実だと思います。
残念ながら、事実として我が国のデータ利活用は余り進んでおらず、AI産業も世界をリードする立場にはありません。にもかかわらず、データやAIは我々の社会においてますます基盤的な役割を果たしつつあるわけです。このような状況下において、硬直的な事前規制にこだわり、イノベーションの機会を失し続けますと、個々人にとっても社会全体にとっても致命的な問題を引き起こしかねないと、このように考えてございます。
次に、第一点目の個人の自律的意思や事前同意に頼る法制度の限界についてでございます。
こうした法制度は、物語としては大変美しいのですが、デジタル化が進んで情報があふれる現代社会においては、個人に対する認知的な負荷が非常に大きく、法益保護の観点からは逆効果になる可能性もずっと指摘されているところでございます。
情報がデジタル化した現代においては、情報濫用等の現実的リスクは、どのような主体によって、どのような運用状況で、どのようなアーキテクチャーの下で情報が管理されるかに大きく左右されます。そして、これらの要素によるリスクの増減は、情報主体、データ主体の同意の有無とは直接的には関わりがありません。
したがって、現代においてリスク管理の観点から決定的に重要なのは、法、運用、技術、制度、運用、技術の適切な組合せによって、情報処理を実際に行う主体の下での情報濫用等のリスクが適正にコントロールできるかという点であり、また、適正なリスク管理を合理的費用で実現するためには、先端科学技術を適時に用いることができるように法制度を設計しなければなりません。
つまり、イノベーションの促進のみならず、法益保護、車の両輪とおっしゃられましたが、まさにそのとおりでございまして、法益保護、この観点からもアジャイルガバナンスのような方法論が求められていると、このように考えてございます。
以上です。
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若井敦子(自民)
御示唆に富んだお話、ありがとうございました。
続きまして、石川参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
先ほど来からお話がありましたように、もう世界のデータ保護法制の動向に精通されておられる方でいらっしゃいます。
今回の個人情報保護法改正案には、AI学習や統計作成等の目的に限り、一定の事項の公表を前提といたしまして、本人の同意を不要とする特例が盛り込まれております。この特例措置につきましては、個人の権利や利益の侵害につながるものだと慎重なお立場の方々がおられるのも事実であります。これに対して、先ほど来からお話が出ておりますいわゆるGDPR、欧州…
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14石石川智也西村あさひ法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士
御質問ありがとうございます。
同意に基づいて提供して、その後どうなっているのか分からないというよりも、やはり、適切なデータ保護がなされることを確認して、ガバナンス等の措置が講じられた上で監督等をするという、こういう枠組みの方が個人の権利利益の保護が確保されるという場合がデータ駆動型社会においては多くなっているということだと思います。この点は、規制の水準を緩めるという発想ではなく、データ駆動型社会の下で個人情報の保護の方法が変化したと、このように思っていただくというのがよいと思います。
今回の特例措置は、今後の様々なガイドライン等を通じて適切なデータガ…
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若井敦子(自民)
ごめんなさい、申し訳ございません、郷野参考人と黒田参考人にも専門的な知見からのお話を是非お伺いさせていただきたいと思っておりましたけれども、時間がなくなってしまいましたので、大変申し訳ございません。
いずれにいたしましても、国民の信頼を得るための努力を惜しまず、透明性を保って、丁寧な説明を重ねることが最も重要でありますので、国民の信頼に足る安心で安全なデジタル社会の実現を願いまして、私からの質疑を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
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