自由民主党の若井敦子でございます。
参考人の皆様には、専門的知見から貴重なお話を伺いました。ありがとうございました。
一昨日の委員会の質疑、また、今日、先生方のお話をお伺いさせていただいて、かつて我が国が経験をした鎖国から開国へという大きな歴史的転換を思い浮かべました。かつて日本は、長く国を閉ざすことで一定の秩序を維持してきたわけです。しかしながら、世界の産業や技術、この情報の流れが大きく変化をする中で、そのままでは国力を維持し発展させていくことが厳しくなり、近代国家として新たな歩みを始めるために、国を開き、世界とつながるという大きな決断を行ったわけであります。
もちろん、データ利活用やAIをめぐる議論と歴史上の出来事を単純に重ねることはできませんけれども、現代社会において変化する技術や社会環境に合わせて制度を進化させていくということの重要性という点では、どこか共通をするものがあるのではないかと感じているわけでございます。
現在、国や地方自治体、民間企業にも価値のあるデータは数多く存在しています。しかしながら、それらが組織ごと、制度ごと、分野ごと、これらに分断され、十分に活用されないままであれば、AIという新しい技術の可能性を引き出すことは難しくなるわけでございます。私は、こうした状況は現在のデータ鎖国とも言える状況ではないかと感じております。
今、世界ではAIをめぐる開発競争が急速に進んでいます。AIの性能向上や社会課題の解決、新たな産業の創出につなげていくためには、質の高いデータを安全かつ適切に活用できる環境の整備が重要であり、データを囲い込んでいるだけでは我が国はこの大きな潮流に対応していくことが厳しくなると考えております。今こそ、国民の権利利益をしっかりと守ることをもちろん大前提といたしまして、必要なデータ連携と利活用を進めていくというデータ開国の視点が求められているのではないかと思っております。
遡れば、十年前の二〇一六年には、こうした変化を見据えて、議員立法により官民データ活用推進基本法、いわゆる官デ法が制定をされました。この法律は、デジタル技術の進展や人口減少、少子高齢化といった社会構造の変化に対応するため、官民が保有するデータの円滑な流通と積極的な活用を通じて、国民生活の利便性向上や新たなビジネス創出を図るという基本理念が掲げられております。
しかしながら、制定から十年が経過した現在において、我が国が官民データを有効的に活用できているか、活用できる環境を実現できているかといえば疑問に思うわけでございます。本格的なAI時代の到来を踏まえれば、データ利活用の制度設計を改めて見直していくことは急務であると考えております。
そのような中で、今回、デジタル行政推進法改正において、官デ法の理念を踏まえて、行政が保有するデータについて一定のルールの下で民間事業者による利活用を可能とする仕組みを整備することは、AI時代における重要な一歩であると考えております。
データは孤立をしていれば十分な価値を発揮することができません。行政と民間、あるいは組織や分野の壁を越えて、安全性と信頼性を確保しながら適切に連携されることによって、AI技術の発展、新たなサービスの創出、行政の高度化、さらには我が国の国際競争力の強化につながる新たな価値が生み出されるのではないでしょうか。
だからこそ、個人情報保護法を始め、個人情報保護委員会規則やガイドライン、医療分野などの個別法制を含めた適切な制度整備が必要であり、また、今回の法案で新設される国の指針や事業計画の認定といった仕組みが重要な役割を果たすものだと考えております。これらは、データ利活用を妨げるものではなく、国民のプライバシーという基本的人権を守るとともに、データの適正な管理や安全性の確保を図りながら安心してデータを活用していくための信頼の基盤であると考えております。信頼できるルールがあるからこそ、国民一人一人が新しい技術を安心して受け入れ、社会全体としてAI時代の恩恵を享受することができるのであると考えております。
データの利活用の推進という攻めの取組と個人情報保護という守りの制度設計は、決して対立するものではなく、むしろAI時代において共に実現していかなければならないものであり、まさに車の両輪であると考えております。この両輪をバランスよく機能させながら、信頼できるデータ流通と利活用の基盤を築いていくことは、我が国がAI時代到来において目指すべき未来ではないかと考えております。
そこで、まず稲谷参考人にお伺いをさせていただきたいと思っております。
稲谷参考人は、政府のデータ利活用制度・システム検討会の委員を務められ、先ほどお話を頂戴いたしましたけれども、アジャイルガバナンスの専門家でいらっしゃるわけでございます。かねてより、ビッグデータが社会を動かすこの時代において、個人の自律的意思、事前同意に頼る法制度には限界があるとのお立場から御指摘をされておられると私は認識をしております。
イノベーションのスピードが速いデジタル社会において、いまだ硬直的な事前規制にこだわることが我が国のデータ利活用、AI産業にどれほどのダメージをもたらすのかについて、是非この機会にお考えをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
8
松下新平(自民)
ありがとうございました。
次に、黒田参考人にお願いいたします。黒田参考人。
この発言のページ
9黒黒田知宏京都大学医学部附属病院医療情報企画部教授
京都大学の黒田でございます。
今日は、このような意見を聞いていただける場を設けていただきまして、ありがとうございます。
私は、データサイエンス研究やAI開発を自分で行う研究者ではありませんが、四半世紀にわたって、主に京大病院の医療データ基盤整備に微力を尽くしてまいりました。
長年この仕事に携わってまいりますと、いろんなことを経験いたします。例えば、ある研究所の方が京大病院の医療情報を自由に使って新しい産業を創出しますと発表をどこかでなさったんだそうです。これを聞いた患者さんが、自分の個人情報を使って企業にもうけさせるなんて許せぬという電話を京都大学…
この発言のページ
10
松下新平(自民)
ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。
この発言のページ
- (上の発言)
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若井敦子(自民)
自由民主党の若井敦子でございます。
参考人の皆様には、専門的知見から貴重なお話を伺いました。ありがとうございました。
一昨日の委員会の質疑、また、今日、先生方のお話をお伺いさせていただいて、かつて我が国が経験をした鎖国から開国へという大きな歴史的転換を思い浮かべました。かつて日本は、長く国を閉ざすことで一定の秩序を維持してきたわけです。しかしながら、世界の産業や技術、この情報の流れが大きく変化をする中で、そのままでは国力を維持し発展させていくことが厳しくなり、近代国家として新たな歩みを始めるために、国を開き、世界とつながるという大きな決断を行ったわけであります。
もちろん、データ利活用やAIをめぐる議論と歴史上の出来事を単純に重ねることはできませんけれども、現代社会において変化する技術や社会環境に合わせて制度を進化させていくということの重要性という点では、どこか共通をするものがあるのではないかと感じているわけでございます。
現在、国や地方自治体、民間企業にも価値のあるデータは数多く存在しています。しかしながら、それらが組織ごと、制度ごと、分野ごと、これらに分断され、十分に活用されないままであれば、AIという新しい技術の可能性を引き出すことは難しくなるわけでございます。私は、こうした状況は現在のデータ鎖国とも言える状況ではないかと感じております。
今、世界ではAIをめぐる開発競争が急速に進んでいます。AIの性能向上や社会課題の解決、新たな産業の創出につなげていくためには、質の高いデータを安全かつ適切に活用できる環境の整備が重要であり、データを囲い込んでいるだけでは我が国はこの大きな潮流に対応していくことが厳しくなると考えております。今こそ、国民の権利利益をしっかりと守ることをもちろん大前提といたしまして、必要なデータ連携と利活用を進めていくというデータ開国の視点が求められているのではないかと思っております。
遡れば、十年前の二〇一六年には、こうした変化を見据えて、議員立法により官民データ活用推進基本法、いわゆる官デ法が制定をされました。この法律は、デジタル技術の進展や人口減少、少子高齢化といった社会構造の変化に対応するため、官民が保有するデータの円滑な流通と積極的な活用を通じて、国民生活の利便性向上や新たなビジネス創出を図るという基本理念が掲げられております。
しかしながら、制定から十年が経過した現在において、我が国が官民データを有効的に活用できているか、活用できる環境を実現できているかといえば疑問に思うわけでございます。本格的なAI時代の到来を踏まえれば、データ利活用の制度設計を改めて見直していくことは急務であると考えております。
そのような中で、今回、デジタル行政推進法改正において、官デ法の理念を踏まえて、行政が保有するデータについて一定のルールの下で民間事業者による利活用を可能とする仕組みを整備することは、AI時代における重要な一歩であると考えております。
データは孤立をしていれば十分な価値を発揮することができません。行政と民間、あるいは組織や分野の壁を越えて、安全性と信頼性を確保しながら適切に連携されることによって、AI技術の発展、新たなサービスの創出、行政の高度化、さらには我が国の国際競争力の強化につながる新たな価値が生み出されるのではないでしょうか。
だからこそ、個人情報保護法を始め、個人情報保護委員会規則やガイドライン、医療分野などの個別法制を含めた適切な制度整備が必要であり、また、今回の法案で新設される国の指針や事業計画の認定といった仕組みが重要な役割を果たすものだと考えております。これらは、データ利活用を妨げるものではなく、国民のプライバシーという基本的人権を守るとともに、データの適正な管理や安全性の確保を図りながら安心してデータを活用していくための信頼の基盤であると考えております。信頼できるルールがあるからこそ、国民一人一人が新しい技術を安心して受け入れ、社会全体としてAI時代の恩恵を享受することができるのであると考えております。
データの利活用の推進という攻めの取組と個人情報保護という守りの制度設計は、決して対立するものではなく、むしろAI時代において共に実現していかなければならないものであり、まさに車の両輪であると考えております。この両輪をバランスよく機能させながら、信頼できるデータ流通と利活用の基盤を築いていくことは、我が国がAI時代到来において目指すべき未来ではないかと考えております。
そこで、まず稲谷参考人にお伺いをさせていただきたいと思っております。
稲谷参考人は、政府のデータ利活用制度・システム検討会の委員を務められ、先ほどお話を頂戴いたしましたけれども、アジャイルガバナンスの専門家でいらっしゃるわけでございます。かねてより、ビッグデータが社会を動かすこの時代において、個人の自律的意思、事前同意に頼る法制度には限界があるとのお立場から御指摘をされておられると私は認識をしております。
イノベーションのスピードが速いデジタル社会において、いまだ硬直的な事前規制にこだわることが我が国のデータ利活用、AI産業にどれほどのダメージをもたらすのかについて、是非この機会にお考えをお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
12稲稲谷龍彦京都大学大学院法学研究科教授
若井先生、御質問いただき、ありがとうございます。
御質問いただいたのは、関連する二つの点に関するものであると承りました。
第一点目は、デジタル社会における個人の自律的意思や事前同意に頼る法制度の現代的な限界に関わる点、第二点目は、硬直的事前規制の現代的な課題について、イノベーションやAI産業の育成といった観点からお尋ねになったというふうに承りました。
まず、第二点目の方から端的にお答えいたしますと、硬直的な事前規制にこだわることは、イノベーションと法律のギャップを生みやすく、問題が大きいと考えます。
私の目からは、EUのAIアクトはまさにこの問題…
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若井敦子(自民)
御示唆に富んだお話、ありがとうございました。
続きまして、石川参考人にお伺いさせていただきたいと思います。
先ほど来からお話がありましたように、もう世界のデータ保護法制の動向に精通されておられる方でいらっしゃいます。
今回の個人情報保護法改正案には、AI学習や統計作成等の目的に限り、一定の事項の公表を前提といたしまして、本人の同意を不要とする特例が盛り込まれております。この特例措置につきましては、個人の権利や利益の侵害につながるものだと慎重なお立場の方々がおられるのも事実であります。これに対して、先ほど来からお話が出ておりますいわゆるGDPR、欧州…
この発言のページ
14石石川智也西村あさひ法律事務所・外国法共同事業パートナー弁護士
御質問ありがとうございます。
同意に基づいて提供して、その後どうなっているのか分からないというよりも、やはり、適切なデータ保護がなされることを確認して、ガバナンス等の措置が講じられた上で監督等をするという、こういう枠組みの方が個人の権利利益の保護が確保されるという場合がデータ駆動型社会においては多くなっているということだと思います。この点は、規制の水準を緩めるという発想ではなく、データ駆動型社会の下で個人情報の保護の方法が変化したと、このように思っていただくというのがよいと思います。
今回の特例措置は、今後の様々なガイドライン等を通じて適切なデータガ…
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