司隆史 (公明党)

2026年6月12日・第221回国会 参議院 本会議 第21号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 26 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 53 発言)

公明党の司隆史です。

会派を代表して、ただいま議題となりました両法律案について質問をいたします。

政府は昨年六月、データ利活用の在り方に関する基本方針を示しました。持続可能な社会と経済成長を両立させるため、データやAIの利活用を全面的に社会実装し、新たな価値を創出していく。その方向性は極めて重要であり、私も賛同するものです。私自身、医療情報分野の研究に携わってまいりました。創薬、AI診断など、医療ビッグデータの活用は、国民の健康寿命の延伸と医療の高度化のみならず、日本の成長戦略の柱となる、その可能性は無限大です。

しかし、データ利活用と個人情報の保護は車の両輪です。両法案共に個人情報の取扱いについて、その実効性が求められます。このうち、個人情報保護法改正案について、以下全て松本国務大臣に質問をいたします。

改正案は、利活用と保護、その均衡の中にあった個人情報保護法を大きく転換するものです。特に、これまで本人同意が原則であった個人データの第三者提供について、本人同意を不要とする新たな特例を設ける点は極めて重大であります。利活用に踏み込んだ改正案に対して、松本大臣は、針の穴に糸を通すような細心の注意を払ったと説明をされておりますが、ガバナンスや透明性が適切に担保されていなければ、単に大きな穴が空いただけです。海外での先例のように、一たび重大な漏えい事案が発生してしまえば、利活用そのものに対する社会的信頼が損なわれ、結果としてデータ利活用が長期にわたり停滞することになりかねません。

そこで、まず伺います。改正案の策定に当たり、どのように個人の権利利益の保護との均衡を取ろうとされてきたのか、その基本理念について松本大臣の答弁を求めます。

第二に、事業者のガバナンスについて伺います。

改正案では、統計、AI開発等の目的であれば、病歴、人種、社会的身分といった機微な情報、要配慮個人情報を全て、含む全ての個人情報を、氏名、住所を含んだ生データの形で本人の同意を得ることなく民間事業者へ第三者提供を可能とする特例が創設されます。事業者には認定制度は設けられておらず、一定事項の公表だけで、外国企業も対象となり得ます。また、法令違反等がない限り、本人の利用停止も認められていません。

ここまで入口だけを広げた制度は世界でも例を見ないものであり、政府は統計、AI目的に限るとしていますが、国民の懸念はその先にあります。機微な情報が民間事業に渡る以上、漏えいや不適切利用のリスクは確実に高まります。関係団体は、認定制度、罰則強化、差止め請求権など、適切なガバナンスを要請しています。

欧州では、EHDS規則において、特例で本人の同意なしでの利活用を認める一方で、差止め請求は可能、事業者には公的機関による審査や安全環境でのデータ分析を義務付けるなど、強固なガバナンスを整備しています。入口を広げるなら出口規制を強化する、これが世界の潮流であります。

政府は安全管理措置義務を課すとしていますが、事業者が果たすべき責任も含めて、今後の規則やガイドラインに委ねられています。また、新設される課徴金制度も、安全管理義務違反は対象外です。最後のとりでは個人情報保護委員会による監督ですが、年間二万件近い漏えい報告にも、命令等に至る案件は年間数件、極めて限定的です。これでは、入口を広げた上に出口規制も機能しない、極めて脆弱な制度と言わざるを得ません。

個人情報保護委員会は、多数の民間事業者、外国企業を含め、どのように監督機能を発揮するのか、松本大臣の御所見を伺います。最低限、認定制度、罰則強化、差止め請求権の導入を検討すべきです。併せてお答えください。

第三に、医療分野におけるデータ利活用について伺います。

医療分野は、医療情報は、患者が医師や医療機関を信頼して提供する極めて機微な情報です。医療情報の二次利用には既に次世代医療基盤法があります。国が認定した事業者が、医療情報から氏名等を削除、加工し、研究機関や製薬企業へ提供する仕組みです。患者の利用停止の仕組みも設けられており、透明性と信頼性を確保しています。改正案により、本人同意なく氏名、住所、病歴などの情報が提供可能となれば、現行制度と不整合が生じ、医療現場の混乱を招きかねません。

さらに、厚生労働省は、医師の守秘義務を定める刑法第百三十四条との関係についても、直ちに違法性が阻却されるとは言えないと説明しています。

このままでは、利活用を進めるはずの制度が、かえって医療現場を萎縮させることとなります。どのように既存の法体系と平仄を取り、一貫性のある制度とするのか、答弁を求めます。

また、政府は規則、ガイドラインで対応するとしていますが、法律で委任された範囲内に限られており、法律の穴まで埋めることはできません。この点についてもお答えください。

そもそも、医療、今後の医療データの利活用の在り方は、昨年六月、デジタル行財政改革会議において検討スケジュールが示されています。EU・EHDSを参考に、包括的な制度設計や情報連携基盤を含むグランドデザインを本年夏取りまとめ、来年法案の提出を目指すとしています。今まさに大きな方向性が示されようとしているわけです。

では、なぜ既に不整合が生じている改正案を急いで先行させるのか。グランドデザインに基づいて、全体の整合性を図りながら制度改正を進めるべきです。松本大臣の御所見を伺います。

最後に、改正案の制度設計と説明責任について伺います。

今回の改正案は、第三十条二の冒頭である第一項において現に公開されている要配慮個人情報の取扱いという限定的な場面を示しながら、改正の核心である公開されていない要配慮個人情報の第三者提供を可能とする規定を第五項に置くという極めて珍しい法構成となっています。このため、現に公開されている情報への対応という論点の陰で、重大な制度変更が分かりにくく、その懸念が全く伝わっておりません。

さらに、先日の衆議院予算委員会でも高市総理は、懸念については説明を受けていないと答弁。総理でさえ知らない懸念を国民は知る由もありません。衆議院での審議を通じて、実質的な論点が、課題がようやく明らかになりつつあります。関係団体も、にわかに容認できるものではない、極めて危険であると強い懸念を示しています。利活用を進めるのであれば、政府は真正面から説明を尽くすべきです。

政府として説明責任を十分に果たしたと言えるのか、なぜこのような法構成なのか、併せて松本大臣の明確な答弁を求めます。

以上、本改正は極めて重大な問題を抱えています。一たび漏えいが起これば、病歴、障害、精神疾患の治療歴、不妊治療歴、犯罪被害歴など、本来最も守られるべき情報が本人の知らないところで拡散し、就職や結婚、社会生活において回復困難な不利益をもたらすおそれがあります。このまま成立させれば、国民の信頼を失い、データ利活用どころか、その基盤そのものを揺るがしかねません。

改正案の核心である第三十条二の第五項、要配慮個人情報の本人同意なき第三者提供については、このまま進めてよいのでしょうか。提供可能な個人情報から要配慮個人情報を除外する法案修正が必要ではないでしょうか。良識の府である参議院で今こそ熟議が必要です。参議院における審議の状況によっては、修正案を提出したく考えております。与野党の皆様には、御趣旨に御賛同をくださいますよう、心から、心から、心からお願いを申し上げまして、質問を終わります。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

〔国務大臣松本尚君登壇、拍手〕

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