宮本雄二元駐中国特命全権大使/公益財団法人日中友好会館会長

2026年5月13日・第221回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第3号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 45 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 69 発言)

私は一九九〇年代の半ばにアトランタで総領事していまして、あれは南北戦争でいいますと南部なんですね。そうすると、南部の人は南北戦争のことをまだ覚えているんですよ。北部の人は忘れているんですね。もう百年以上たっていました、南北戦争から。南部の人が覚えていて、感情的になって反発するというような、何度か経験いたしましたが、やっぱり戦争における加害者と被害者の関係はどうしてもそうなって、被害者の方は百年たってもまだ覚えていると。すなわち、教育だけではなくて、中国社会の中に、社会の記憶としてあの歴史問題が残っているというのを我々は自覚しておく必要があるというふうに思います。

何ゆえに九四年、あの頃その江沢民さんが愛国主義教育を強めたかというと、私の聞いている話は、一九八九年の天安門事件、あれで若者が共産党反対を言い出したんですよ。それにトウ小平さんがびっくりして、これだけ祖国のために尽くしている我々を若者が批判するとは何事だと、教育がなってないんじゃないかと、これが愛国主義教育の始まりだったと。実施したのは江沢民さんですが、トウ小平さんが天安門事件を振り返って、若者教育をしろということで始まったのが出発点だというふうに聞いております。

その結果、その歴史教育をしますと、もう反日の材料の方が多くなってしまうわけです。もちろん、アヘン戦争からやっていますし、一応そういうところも入っているんですが、数からすると圧倒的に日本が多くなってしまうということで、反日感情がどうしても厳しいものになってくるということです。

先ほど申し上げましたように、直接交流によって変わってくると。だから、今どういう構図になっているのか私なりに大胆に予測しますと、外国人と会ったこともない、外国に行ったこともない、そういう多数の中国の人が内陸部を中心に私は七割ぐらいいるんじゃないかと思うんです。で、沿海部を中心に、海外に行ったことがある、外国人と接触したことがあると、こういう中国の人がいると思うんです。この人たちは反日教育云々と関係なく、実際に日本で知っていますし、これは、だから、もう少し開明的というか、バランスの取れた対日観をしてくれているんじゃないだろうかと思います。

しかし、七割はそういうのはありませんから、党とか、要するに外交はもう完全に党が牛耳っていますので、党のラインの宣伝が行くんですね。それを比較してそうじゃないという材料を持たないんですね。言われたものを、ああ、なるほど、そうかということで、日本に対する感情というものが、もしそういう形で宣伝のラインを日本に厳しいものにしていけば、国民もそういうふうになるということなんですね。

ですから、今、ウイチャット、これちょっと聞いた話で、こういう場で御説明するのが適当かどうか分かりませんが、ある中国の若いカップルの、というか、若い御両親のところの子供が小学生になる。で、もう両親は日本に非常に好感を持っておられるんですね。だから、家庭の中では日本に対する悪口なんか全くないわけです。そしたら、五年生ですかね、何かそれぐらいのときになったら、途端に反日的なことを言い出したと。それはお母さん心配になって、学校の教科書を全部見てみたと言う。前と変わってないと言うんですね、変わってないと。スマートフォンを与えた。スマートフォンで、中のあれ、そこが反日で満ちあふれているんですね。

ですから、今はその教育もありますけれども、より大きいのはネット空間、ここでの反日が更に強いというふうに思っております。

前後のやりとり

41の発言を見る

49の発言を見る