小竹凱 (国民民主党)

2026年5月26日・第221回国会 衆議院 本会議 第20号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 58 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 67 発言)

国民民主党・無所属クラブの小竹凱です。

会派を代表して、再審法改正案について、高市総理大臣及び議員立法提出者に質問いたします。(拍手)

まず、基本認識について伺います。

昨年八月、福井事件の前川さんは、私の地元にあります名古屋高裁金沢支部において、事件発生から実に三十九年を経て再審無罪となりました。また、袴田事件では、事件発生から無罪確定まで五十八年を要しました。これらは現行の再審制度に深刻な構造的課題があることを示しています。

法務省は、本改正案を、再審制度が非常救済手段としてより適切に機能するための重要な法案と説明しています。

総理に伺います。福井事件や袴田事件が示した現実を踏まえ、再審法改正の必要性を総理はどのように認識しておられるのでしょうか。また、本改正によって、これまで冤罪被害を生み出してきた制度的、構造的課題を克服し、無辜の人を二度と長年苦しめない制度へと改めることができると考えておられるのか、明確な答弁を求めます。

証拠リストの開示について伺います。

本案では、証拠開示の入口となる送致書類等目録を含む証拠リストの開示について、なぜ明確に広く保障しなかったのでしょうか。再審請求人側は、そもそもどのような証拠が存在するのかを知らされなければ、証拠の関連性や必要性を具体的に主張することができません。存在自体を知らされていない証拠について請求人側に特定や疎明を求めることは、実際上、ほとんど不可能であります。無実を救済する制度であるならば、まず何の証拠が存在するのかを知る機会を保障することこそ必要ではないでしょうか。答弁を求めます。

また、閣法では、証拠は裁判所への提出命令という構造が取られ、裁判所が標目の一覧表の提示を受ける場合でも、その閲覧、謄写は認められない仕組みとしています。対して、議法では、送致書類等目録を含む検察官保管証拠等について、何を開示の対象とし、誰に対する開示と規定しているのか。また、開示の方法や一覧表の提示の取扱いについてどのように規定しているのか。議法提出者の西村智奈美さんに答弁を求めます。

証拠開示の範囲について伺います。

本案は、再審請求審における証拠開示の対象を再審請求の理由に関連すると認められる証拠に限定しています。しかし、再審請求人や弁護人は、開示前の段階ではどのような証拠が存在するのか十分に把握できず、その段階で関連性や必要性の具体的な主張を求めれば、無罪方向の証拠ほど開示されにくくなるおそれがあります。本案は、この関連性を請求人側が現時点で立証できる範囲に狭く限定して解するのではなく、無罪を基礎づける可能性のある証拠や、その探索に必要な証拠まで含めて、広く解する考えがあるのでしょうか。答弁を求めます。

また、本案は、裁判所が職権で検察官に対し証拠提出命令を出し得る仕組みを示しておりますが、その対象は、関連性、必要性、弊害の程度などを踏まえ、相当と認める場合に限られており、裁判所が消極的であれば十分に機能しないおそれがあります。再審請求人側が証拠の存在自体を把握できない以上、当事者の申立てだけに委ねるのでは不十分であります。だからこそ、裁判所が必要と認めるときには、真実解明のために、積極的に職権で証拠開示命令を発することが不可欠であると考えます。

総理は、職権による証拠開示命令を、例外的で消極的な制度としてではなく、再審請求審の実効性を支える中核的手段として位置づける必要性をどのように考えているのでしょうか。

また、証拠の保存、管理に関する規定について伺います。

過去の再審事件では、証拠の保存、管理や存否確認が適切に行われていなかった疑いのある事態が現に生じています。袴田事件では、存在しないと説明していた五点の衣類発見直後を撮影した写真ネガが後に発見されました。また、日野町事件でも、不存在とされていた指紋、掌紋を採取したゼラチン紙等の証拠品などが後に発見されています。これらは、単なる個別のミスではなく、証拠の保存、管理等の仕組み自体に問題があることを示しているのではないでしょうか。

ところが、本改正に関する法制審の議論では、証拠の保存、管理に新たな法定規律は設けられず、検察や警察における適切な運用が望まれるにとどまっています。しかし、幾ら証拠開示制度を整えても、肝腎の証拠が適切に保存されず、不存在や不見当と扱われたままでは、無辜の救済は実現できません。捜査機関及び検察における証拠物、捜査資料について、保存義務や一覧表、目録の作成及び管理を法律上明確に義務づけるべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

開示証拠の目的外使用禁止について伺います。

本案は、再審請求手続又はその準備以外の目的で開示証拠の複製等を交付し、提示し、又は提供することを禁じ、これに罰則まで設ける方向を示しています。

しかし、通常審は公開の法廷であるのに対し、再審請求審はその多くが非公開であるのが実態であります。にもかかわらず、通常審と同じ発想で目的外使用禁止を持ち込めば、ただでさえブラックボックス化しやすい再審請求審を更に不透明なものにする可能性があると考えますが、見解を伺います。

そもそも、弁護士には弁護士職務基本規程等による厳格な倫理規律があり、懲戒制度も整備されております。加えて、名誉毀損やプライバシー侵害については、既に現行法上の対応手段も存在しています。それにもかかわらず、再審請求審において、あえて新たに罰則つきの目的外使用禁止を設けなければならない具体的な立法事実は何なのか、なぜ既存の規律では足りないのか、答弁を求めます。

また、実際の再審事件において、長期間にわたり請求人に寄り添い、支え続ける支援者の存在が不可欠であります。さらに、証拠の検証や誤判原因の究明のためには、外部専門家の知見を得ることも重要です。

ところが、非公開で進みがちな再審請求審に目的外使用禁止が課されれば、支援者との信頼関係を支える情報共有や専門家との連携までも萎縮させ、長期間に及ぶ再審事件を維持、継続すること自体が困難となり、無辜の救済に重大な支障を生じさせるおそれがあると考えますが、高市総理の見解を伺います。

また、法務省は、弁護士側が利益目的でなく使用した場合は処罰対象にならない一方、違法と評価され得るとしています。しかし、それでは、正当な弁護活動や支援活動に対する萎縮効果が懸念されます。であるならば、処罰の対象を弁護士側が利益目的で使用した場合に限定するよう、条文上の構成要件を明確に改めるべきではないでしょうか。答弁を求めます。

袴田事件では、検察官から開示された五点の衣類のカラー写真ネガについて、市民、支援者、専門家、報道関係者らによる外部検証と社会的共有が行われ、それが、再審開始、ひいては無罪救済に向けた世論形成と審理の前進に決定的な役割を果たしたと指摘されています。

このように、再審において、法廷内だけでなく、外部による証拠検証と社会的共有が誤判是正と無辜救済の迅速化に現実に資してきたと思いませんか。総理は、袴田事件の経緯が持つ意義をどのように認識しているのでしょうか。その上で、外部検証や社会的共有の意義を認めるのであれば、開示証拠の目的外使用を広く禁じることは、将来の袴田事件のような救済をかえって困難にするおそれがあるのではありませんか。見解を伺います。

仮に、通常審との均衡を理由にするのであれば、むしろ、公開法廷を前提とする通常審においてすら弊害が指摘されているこの規定自体を見直すべきであり、より不透明な再審請求審に機械的に持ち込むのは順序が逆ではありませんか。答弁を求めます。

また、関連して一問伺います。

五月二十四日、共同通信社の報道によれば、法務省は、違法な取調べをめぐる国家賠償請求訴訟において、取調べの録音、録画データを裁判所へ提出する際、閲覧制限の申立てや、非公開の弁論準備手続での証拠調べを裁判所に求めることを推奨する通知を各地の法務局に発出したとのことであります。当該通知の発出は事実でしょうか。また、その趣旨について、明確な答弁を求めます。

再審開始決定に対する検察官の不服申立てについて伺います。

本案は、再審開始決定に対する検察官の不服申立てを原則として禁止しています。しかし、例外として残される再審開始決定が取り消されるべき十分な根拠がある場合の範囲が広ければ、検察官はなお広く再審開始決定を争うことができ、結局、現行と実質的に大きく変わらないことになりかねません。

ここで言う十分な根拠とは、単なる証拠評価や事実認定の違いまでを含むのですか、含まないのですか。含まないのであれば、それは再審開始決定に重大かつ明白な法的瑕疵がある場合など、極めて限定された場合に限ると理解してよろしいですか。答弁を求めます。

また、本案は、検察官抗告を行った際に、抗告理由を公表するという規定を設けています。しかし、再審請求において抗告が正当かどうかは、新証拠に明白性があるかどうかの判断に懸かっています。ところが、新証拠が開示証拠である場合、証拠自体を見ることができなければ、幾ら政府が抗告理由を公表したとしても、その当否を外部から検証することはできません。したがって、抗告理由の公表義務を置くだけでは不十分であり、審理の公開、あるいは開示証拠の目的外使用禁止の見直しを併せて行わなければ、この規定は空文化しかねないのではないでしょうか。総理の見解を伺います。

過去の事件の検証について伺います。

再審無罪となった事件については、個別の救済にとどまらず、誤判の原因を検証し、制度改善につなげることが不可欠であります。この点、袴田事件については、二〇二四年十二月に最高検察庁から検証結果報告書が公表されましたが、誤判の要因として捜査、公判活動そのものが問われているにもかかわらず、その当事者である組織自らが内部限りで検証を行う現在の枠組みには、客観性、中立性の観点から限界があるのではないでしょうか。国民の司法に対する信頼を確保するためにも、第三者性を担保した独立した検証体制を構築すべきと考えますが、見解を伺います。

その上で、長期間にわたり再審請求が続き、証拠評価や捜査の在り方について重大な疑問が指摘されてきた福井事件についても、第三者機関による検証を行うべきと考えますが、総理の見解を伺います。

無辜の不処罰は近代刑事司法の根幹であり、万が一誤判が生じた場合には速やかに救済できる制度が整っていなければ、司法に対する国民の信頼は成り立ちません。だからこそ、再審制度は、司法の正当性を支える最後のとりでとして、不断に見直されるべきものと考えます。

憲法四十一条は、国会を、国権の最高機関であり、唯一の立法機関であると定めています。過去の冤罪の悲劇を二度と繰り返さない制度を構築することこそ、我々立法府の責務であります。

本改正は、無辜の救済のみならず、司法への信頼、そして法治国家としての正当性と誇りを懸けた議論であることを申し上げ、私の質問を終わります。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣高市早苗君登壇〕

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