鈴木一人東京大学公共政策大学院教授/国際文化会館地経学研究所長

2026年5月14日・第221回国会 衆議院 内閣委員会 第11号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 4 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 95 発言)

ありがとうございます。御指名いただきました東京大学並びに地経学研究所の鈴木と申します。

私は、国際政治経済学というのを専門にしておりまして、日本が二〇二二年に経済安全保障推進法を成立して以来、世界から経済安全保障に対する日本の取組というのが極めて高く注目されていて、その評価について、またこの内容について説明を求められることが多々ございます。そうした観点から、今回こうした改正が行われるということで、更なる進展をされるということを大変望ましい、また、国際社会においても胸を張る経済安全保障の制度ができるんだろうということを期待できるというふうに考えております。

現代の世界においては、ルールに基づく国際経済秩序というものがだんだんと揺らいでおって、経済の武器化と言われるような現象が散見されるようになっております。経済の武器化というのは、まさに国家が政治的な目的のために経済的な手段を用いて他国に対して威圧、圧迫を行うことである。その際に重要になるものは、他国において不可欠性がある、それはすなわち、自国において自律性が低い状態であるということが問題であり、その際に、他国はこうした不可欠性を使って、輸出規制や関税、そして投資規制などの手段を使って経済的な威圧を行ってくるということが実際に行われております。

ですので、現代社会においては、自律性を高めること、これこそが他国からの圧力をかわす手段であり、我々の不可欠性を高めてそうした威圧に対して対抗できる措置を取ることができる、こういったことが重要なのではないかというふうに考えております。

この観点からいいますと、今回の改正においては、この自律性を高める措置ということでは大変適切なものだと思います。

第一に、サプライチェーンの強靱化に向けた更なる措置として、海底ケーブルの敷設等を含む役務を加えるということは、物の自律性を高めるだけでなく、敷設、補修、維持をするといったような、重要物資を使うというときの重要な手段として、この措置として重要なものだというふうに考えております。

また、基幹インフラに医療を加えるという点に関しては、これもまた重要なことだと思っております。

私も、二〇二二年の経済安保推進法の制定の際に、この件について、医療は入らないのかということを経済産業省また内閣府の担当者に問い合わせたことがありますけれども、その際は、日本の医療というのは分散型であり地方に分かれているので一つのシステムを攻撃されてもこのインフラは強靱性がある、つまりリスクが分散されている状態である、ゆえに医療データというのは攻撃の対象にならない、こういう判断から最初は入らなかったというふうに伺っております。

しかしながら、経済安全保障推進法が成立して以来三年がたちまして、その中で、医療に関わるデータのシステム、これがより一元化される、マイナンバーカードなどを使った効率的な医療データの交換が可能になるような状況になって、今回は医療を含めることで、医療に関するサイバーインフラ、それから様々な医療制度、これの制度が一元化してきたということが、今回の改正に重要インフラとして加えることの意義だというふうに考えております。

指定基金の拡大については、主にNICTとJAXAが想定されているというふうに伺っておりますけれども、それはやはり、我が国の不可欠性を高めていく上でも重要だと思います。とりわけ、今NICTが進めている光通信などの技術ですとか、JAXAが進める衛星の打ち上げ、そして衛星の整備ということは、日本だけでなく、世界において不可欠なシステム、不可欠なサービスを提供することになるであろうというふうに考えております。

こうした不可欠性が高まることによって、我が国が提供するサービスやシステムをほかの国が使っていく、それによってほかの国が我が国を不可欠な存在として見ていくようになる、これがまさに不可欠性を高め、他国による依存度を高め、そして我が国と他国の関係性を強化していく、こういった効果につながっていくのではないかなというふうに考えております。

また、重要な海外事業の支援については、現在、高市政権の下で進められている成長戦略、私も大変光栄なことながら日本成長戦略会議の構成員として参加させていただいておりますけれども、その成長戦略と連動するものであるというふうに理解をしています。

例えば、私も参加しております造船ワーキンググループなどでは、今、船舶の補修の問題を論じていたりもしますが、その中で一つの問題になっているのは、他国、特に今、中国ですとかその他の国に修繕用のドックがあるということなんですけれども、これは、船舶の修繕が必ずしも情報をちゃんと管理する国にあるわけではないというリスクを抱えているのではないかというふうに思っております。

そういう意味では、修繕する船舶の安全、そしてその情報の保全ということを考える上でも、友好国、同志国、信頼できる国々にドックを造るということを進めていく。これは一つの例でありますけれども、こうした重要な海外事業の支援というのは、我が国とそして信頼する同志国との間の関係を強化するという意味でも重要な役割を果たすのではないかというふうに考えております。さらには、そうした国々との事業の展開を通じて我が国の競争力を強化することにも貢献し、それがひいては我が国の経済成長にもつながるものだというふうに考えております。

シンクタンクと官民協議会の設置についてですけれども、これは大変すばらしいことだと思っております。私自身も、今、地経学研究所というシンクタンクを運営させていただいておりますけれども、この中で、常に経済安全保障の研究を進める中で非常に難しいのが、いかにしてサプライチェーンの分析をしていくか、また、どこにチョークポイントがあるのか、これを判断していく、分析していくためには、やはり官民の間での情報共有が不可欠であるというふうに考えております。

当然のことながら、経済的な活動というのは企業が担っていることであり、そして、そうしたサプライチェーンのつながりというのは企業が持っている情報なしには理解することが無理であるというふうに思っております。そうした情報に基づいて、我が国がどこに脆弱性を持っているのか、また、他国の脆弱性がどこにあるのかということを理解すること、これが今後の経済安全保障を進めていく上で、更に精緻化したサプライチェーンの強靱化につながっていく、また、不可欠性を強化するということにつながっていくのではないかというふうに考えております。

このような観点から、今回の改正は極めて適切なものだというふうに感じておりますが、必ずしも完全なものだとは思っておりません。

第一に、官民協議会の設置に関する条項の中に「未然に防止する」というふうにありますけれども、実際、現在のホルムズ海峡を取り巻く問題などを考えてみますと、これは事前に予想できるようなことではなく、突発的に起こる、そういった事象がサプライチェーンの寸断ということには必ずつきまとうことであろうと思います。ですので、未然に防止するという考え方では必ずしも十分な対応が取れない可能性があるということで、こうした未然に対応するという限定をする必要は必ずしもないのかなというふうに考えております。

これは、特定重要物資の見直しに関しても同様に「未然に防止する」という規定がありますけれども、ここもまた柔軟に対応できるように検討されるべきであろうというふうに思います。

また、今回の改定とは少し離れますけれども、今後、不可欠性を高めていった後をどうするかということを考える必要があるかと思います。現在、欧州においては、EUに反威圧措置、アンチコアージョン・インストルメントというものがございます。これは相手が威圧をかけてきたときにそれに対抗する措置を取るということでありまして、まさに抑止力としてそうしたものが機能しているというふうに考えております。こうした点も含めて、今後の検討をお願いしたいと思っております。

私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

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