お答えいたします。
まず、国際法上、一般論といたしまして、違法性阻却事由というものについては、緊急避難よりも、緊急状態と政府は言っていると思いますが、緊急状態よりも対抗措置の方がより確立した、つまり、先例とか判例もしっかりしているということで、よりそちらの方が支持が得られる違法性阻却事由として、教科書でもそのような形で書かれていると思います。
そういう意味では、緊急避難というものは、国際法をやっている人間は余りそこまでしっかり勉強しなかったというぐらい、余り注目されてこなかったというものであると思います。そういうものを反映して、緊急避難というものについて、サイバーの文脈で援用する国々がやはりいないということも影響しているんだと思いますが。
ただ、しかしながら、やはり対抗措置というものをサイバーの文脈で援用するということは極めて難しいという問題点もございます。それはやはり、対抗措置を援用するためには、相手の国が先に違法行為をしていなきゃならない。つまり、それは、国家がやったというところまで持っていかなきゃいけないという、いわゆるアトリビューション、帰属という問題が出てきます。これがサイバーの実態に非常にそぐわない。
という中で、でも、しかしながら、市來先生がおっしゃったような違法性阻却事由の懸念という、対策も考えなきゃいけないと私は申し上げましたが、第二段階ということで、サイバーに一番その特性に見合った国際法の違法性阻却事由とは何かというようなことを考えると、これは、確かに濫用の危険性というのはこれまで主張されてきたものではありますけれども、ただ、国家の安全保障上の、ここで言う国家責任条文での緊急避難というようなところでございますが、重大かつ差し迫った危険から根本的利益を守るために、つまり、相手の先行違法行為が国によって行われているというようなことを、考えなくても言える、それはそれでまた濫用のリスクがあるじゃないかというふうに思われるかもしれないんですが、ただ、しかしながら、サイバー攻撃の実態を鑑みると、一番これが適切であるというような国が必ずしも今の現状では少なくても、一番サイバーの実態に合った違法性阻却事由として主張しているというのも事実でございます。
そういうような判断がこれから恐らく日本を中心に、私の模範事例というような話にも合うと思うんですが、事情を、特性を考えて、違法性阻却事由というものが、対抗措置と緊急避難、どっちが本当にいいのかというようなことを考えていかなきゃいけない、そういうふうに考えております。
以上です。
38
塩川鉄也(共産)
ありがとうございます。
次に、黒崎参考人にお尋ねいたします。
サイバー分野の国際法は発展途上というお話がございました。フランスは、自国のネットワークに影響をもたらす全ての外国のサイバー行動は主権侵害になり得ることを示唆する立場ということを伺っております。
そのような国がある下で、法案におけるアクセス・無害化措置がサイバー攻撃と判断される、そういう危惧についてはどのようにお考えでしょうか。
この発言のページ
39黒黒崎将広防衛大学校総合安全保障研究科教授
お答えいたします。
確かに、現時点では、フランスにつきましては、ネットワークに対して影響を及ぼすものについては主権侵害の可能性があるというような見解を示しているというふうに私も認識しております。
問題は、ネットワークへの影響とは何なのかというようなところはやはり国際法学者としては気になるところでございます。これを、低い烈度というか、敷居が非常に低いと見るか、あるいは、実は言っていることはほかの国と、例えば物理的な被害とか機能喪失とかといったことと変わらないかもしれない。ただ、だから、そこら辺は、その国の安全保障に対する考え方というものがやはり背景にあ…
この発言のページ
40
塩川鉄也(共産)
関連して、緊急避難についてですけれども、国際法学者は適用できるケースを非常に限定して考えており、これを理由にすれば対抗措置以上に論争を呼ぶ可能性がある、日本政府は緊急避難を援用することも国際法上認められると考えると主張しているが、同様の主張をしている国はまだ多くはないと述べておられます。
そういった点での危惧を覚えるところなんですが、この点についてはいかがでしょうか。
この発言のページ
- (上の発言)
41黒黒崎将広防衛大学校総合安全保障研究科教授
お答えいたします。
まず、国際法上、一般論といたしまして、違法性阻却事由というものについては、緊急避難よりも、緊急状態と政府は言っていると思いますが、緊急状態よりも対抗措置の方がより確立した、つまり、先例とか判例もしっかりしているということで、よりそちらの方が支持が得られる違法性阻却事由として、教科書でもそのような形で書かれていると思います。
そういう意味では、緊急避難というものは、国際法をやっている人間は余りそこまでしっかり勉強しなかったというぐらい、余り注目されてこなかったというものであると思います。そういうものを反映して、緊急避難というものについて、サイバーの文脈で援用する国々がやはりいないということも影響しているんだと思いますが。
ただ、しかしながら、やはり対抗措置というものをサイバーの文脈で援用するということは極めて難しいという問題点もございます。それはやはり、対抗措置を援用するためには、相手の国が先に違法行為をしていなきゃならない。つまり、それは、国家がやったというところまで持っていかなきゃいけないという、いわゆるアトリビューション、帰属という問題が出てきます。これがサイバーの実態に非常にそぐわない。
という中で、でも、しかしながら、市來先生がおっしゃったような違法性阻却事由の懸念という、対策も考えなきゃいけないと私は申し上げましたが、第二段階ということで、サイバーに一番その特性に見合った国際法の違法性阻却事由とは何かというようなことを考えると、これは、確かに濫用の危険性というのはこれまで主張されてきたものではありますけれども、ただ、国家の安全保障上の、ここで言う国家責任条文での緊急避難というようなところでございますが、重大かつ差し迫った危険から根本的利益を守るために、つまり、相手の先行違法行為が国によって行われているというようなことを、考えなくても言える、それはそれでまた濫用のリスクがあるじゃないかというふうに思われるかもしれないんですが、ただ、しかしながら、サイバー攻撃の実態を鑑みると、一番これが適切であるというような国が必ずしも今の現状では少なくても、一番サイバーの実態に合った違法性阻却事由として主張しているというのも事実でございます。
そういうような判断がこれから恐らく日本を中心に、私の模範事例というような話にも合うと思うんですが、事情を、特性を考えて、違法性阻却事由というものが、対抗措置と緊急避難、どっちが本当にいいのかというようなことを考えていかなきゃいけない、そういうふうに考えております。
以上です。
42
塩川鉄也(共産)
ありがとうございます。
もう一問、黒崎参考人にお尋ねしますが、今回の法案は日本の安全保障における転換点となり得る、第一に、警察が安全保障に関わるようになること、第二は、外国からの不正なサイバー攻撃に対して犯罪処罰とは別の目的で域外実力行使を警察がし得ること、警察は従来、刑事犯罪への対処と国内の脅威を対象とする治安、公共秩序の維持を主たる任務としていたが、その垣根を越えると述べておられました。
今回の法案は、このような、警察の活動に質的な大きな変化をもたらすものということなんでしょうか。
この発言のページ
43黒黒崎将広防衛大学校総合安全保障研究科教授
お答えいたします。
まず、国際法上に限って、国内法であれば行政警察権とか、また警察か自衛隊であるかというのは重要な要素になると思いますが、国際法上は、先ほどお答えさせていただきましたように、国が何をするか、警察機関がやるか自衛隊がやるかとか、そういうようなことで、それ自体で決まるというわけではございません。
その国がどういう目的で行動を行うのか、国際関係において、ということですので、その意味では、日本の警察組織がこれまで関わらなかったことをやるようになったことは画期的だというふうに申し上げましたが、国際法からしますと、いろいろな、警察であっても安全保…
この発言のページ
44
塩川鉄也(共産)
ありがとうございます。
次に、大澤参考人にお尋ねいたします。
冒頭の意見陳述の中で、警察権の関係のお話がございました。今回、アクセス・無害化措置を我が国の領域外で警察権を用いて実施することは、国内法を外国の領域で行使する執行管轄権の行使に当たるため、国家管轄権である執行管轄権は原則としてそれぞれの自国領域内に限り認められるという国際法の属地主義の原則に反する可能性が生じるということですけれども、こういった点についてはどのように対応することなのか、その点についてお聞かせください。
この発言のページ