川合孝典 (国民民主党)

2026年6月19日・第221回国会 参議院 本会議 第23号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 13 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 54 発言)

国民民主党・新緑風会の川合孝典です。

会派を代表して、刑事訴訟法の一部を改正する法律案について質問します。

まず初めに、高市総理に質問します。

今回の再審法制の改正の本来の目的が、無実の人が罪に問われるという国家最大の誤りを正し、正しい裁判を行うための盤石な仕組みを構築することにあるという点については、誰もが異論のないことだと考えます。

衆議院での再審法審議が紛糾した背景には、これまでの冤罪事件における検察の姿勢に対する国民の強い不信感が存在しています。国家の最高権力の一つである捜査、起訴の権限を独占する検察への信頼が揺らいでいるからこそ、法案に盛り込まれた例外や曖昧な基準が全て検察の保身から出てくるものとの疑念につながっております。この事実を政府は重く受け止める必要があります。

こうした現状を踏まえて、今回の刑事訴訟法改正の立法事実について、高市総理の認識をお伺いします。

衆議院での審議を通じて浮き彫りになった主な問題点と課題は、一言で言えば、戦後初の再審法の法制化という一歩を踏み出す一方で、冤罪被害者を迅速に救済するための実効性が極めて不十分であり、運用次第では救済活動にブレーキを掛けかねない構造になっている点であります。

まず、証拠リストの開示に関して質問します。

法改正の大きな柱である証拠提出命令制度について、国民民主党は証拠リストの開示を強く求めてきましたが、法案は、裁判所は、一定の要件の下、検察官に対し、再審の請求理由に関連すると認められる証拠の提出を命ずることとし、証拠リストの開示は拒否しています。

これまでの冤罪事件の歴史を振り返ると、一見すると請求理由とは直接関係なさそうな捜査の初期段階での書類やネガフィルムなどの中に、アリバイを証明する決定的なヒントが隠されていた事例が多く見受けられます。

証拠リストがないということは、申立て側はどのような証拠があるのか分からない状態のまま証拠の提出を裁判所に要請するということを意味します。証拠の全容が分からないまま、弁護側はどのようにして裁判所に証拠開示請求を行えというのか、法務大臣の見解を求めます。

法務省が証拠リストの作成、開示の義務化を拒む理由について質問します。

国会審議において、法務省は、証拠リストの作成や開示を法的に義務付けることを拒む理由の一つとして、過去の古い事件の膨大な捜査資料を全てひっくり返し、改めて厳密な証拠の一覧表を作ることは、捜査機関に対して過度な業務負担を強いることになると、とんでもない答弁をしています。

冤罪被害者が何十年も人生を奪われている重みに比べれば、リスト作成の負担など取るに足らないものだと考えます。捜査機関への過度な負担を強いることが本当に証拠リストを作成、開示の義務化を拒む正当な理由と考えているのか、法務大臣の見解を求めます。

あわせて、そもそも通常審の段階で証拠を適切に管理していればリスト化は難しくないものと考えますが、捜査当局は重大事件の証拠管理を一体どのように行っているのか、法務大臣の説明を求めます。

次に、関係者のプライバシーや名誉の侵害という証拠リストの不開示理由について質問します。

検察は、保管している未提出の証拠を一覧表にして開示すること自体が関係者のプライバシー侵害や名誉毀損につながるおそれがあると答弁していますが、プライバシー侵害の懸念については、マスキングや部分的な不開示などの閲覧を制限する手続を行うことで幾らでも技術的に対応可能であり、リストそのものを開示しない理由には当たらないものと考えます。

関係者のプライバシーや名誉を侵害しない証拠リストの開示方法を検討すべきと考えますが、法務大臣の見解を求めます。

そもそも、通常の刑事裁判では、一定の要件の下で検察官が弁護人に直接証拠を開示する仕組みとして、刑事訴訟法三百十六条の二十六などの証拠開示命令制度が既に存在しています。再審という、より慎重な冤罪救済が求められる場において、通常審よりも弁護側の証拠へのアクセスを制限し、裁判所への提出にとどめる理由について、法務大臣の説明を求めます。

証拠の目的外使用の罰則規定の新設について質問します。

開示証拠を目的外に使用した者への刑事罰の新設については、弁護団やメディアから、救済活動や報道が萎縮するとの懸念が示されています。これに対して、平口法務大臣は、通常のファクト検証や無罪を証明するための支援者らによる再現実験などは目的外使用には当たらないと衆議院で答弁しておられますが、罰則適用の具体的な境界線については個別の事案に応じて判断されると、曖昧な答弁に終始しています。

ルールは守れば問題ない、正当な活動は処罰されないなどとして、具体的な刑事罰の適用基準を示さないことによって弁護団やメディアの救済活動や報道が萎縮するという懸念についてどのように認識しているのか、法務大臣の見解を求めます。

また、弁護人による無罪の主張を裏付けるための行為は処罰の対象にはならないとのことですが、具体的な境界線を示さず、正当なものは大丈夫と抽象的な説明に終始する法務大臣の姿勢は、現場の逮捕、処罰リスクを軽視しているものと考えます。

冤罪を訴えられている当の国家権力から、俺たちが適切に判断するから安心しろと言われても、弁護士や支援者が安心して活動できるはずがないものと考えます。

証拠の目的外使用と目的内使用の具体的な境界線を明示すべきと考えますが、法務大臣の見解を求めます。

あわせて、端的に質問しますが、マスコミによる再審をめぐる報道で開示証拠が取り扱われた場合は、目的内使用と目的外使用のどちらに該当するのか、法務大臣の明確な答弁を求めます。

また、法務省は、通常審でも既に刑事訴訟法二百八十一条の四に開示証拠の目的外使用を禁ずる罰則が規定されていることを理由に、再審でも同様のルールを設けるだけで、過度な懸念には当たらないとしていますが、通常審と再審では前提が全く異なります。

通常審は法廷の審理が基本ですが、再審の歴史は世論を動かして社会問題化させるための特殊な闘いであります。通常審の理屈をそのまま再審に持ち込み、今まで問題なかったから再審でも問題ないとする答弁は、再審における世論喚起の重要性を軽んずるものと考えますが、この指摘に対する法務大臣の見解を求めます。

最後に、検察官の抗告禁止に対する例外規定について質問します。

平口法務大臣や法務省は、十分な根拠がある場合は抗告可能という例外規定を残した理由について、万一、地裁などの裁判所が事実誤認や法令解釈のミスによって明らかに不当な再審開始決定を下した場合、それを上級審で正す手段が全くないのは司法制度としてのバランスを欠くと説明していますが、再審が始まるということは、本人が無罪になるわけではなく、裁判のやり直しというスタートラインに立つだけにすぎません。

万一、地裁などで事実誤認や法令の解釈ミスが生じたとしても、再審公判で争えばよいことだと考えますが、あえて例外規定を維持する理由について、法務大臣の説明を求めます。

衆議院での修正案には、施行後五年ごとの見直しという附則が付きましたが、これは裏を返せば、現時点での法案には見直さなければならないほどの問題点が含まれていることを政府自らが認めたことを意味しています。

再審決定の引き延ばしの懸念がある抗告の例外規定や、再審の支援活動の萎縮が懸念される判断基準の曖昧な証拠の目的外使用の罰則化、そして捜査当局による証拠の隠蔽につながりかねない証拠リストの不開示など、本法案には課題が山積しております。

ようやく動き始めた再審規定の見直しですが、これは冤罪を疑われる被害者が生きている間に機能しなければ意味がありません。このことを政府、法務省は重く受け止めるべきであると指摘し、私の質問を終わります。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

〔内閣総理大臣高市早苗君登壇、拍手〕

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