田岡直博香川県弁護士会弁護士

2026年6月25日・第221回国会 参議院 法務委員会 第18号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 19 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 115 発言)

まず、十分な根拠といいましても、こういった用語が用いられている例はほかの法令にはございません。もうこの条文だけでございます。

そして、この十分な根拠とは何かについて、佐藤刑事局長は現決定が取り消されるべき蓋然性が高い場合を言うのだと説明していますが、六号再審、つまり無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときのうち、この明らかなというのは元々が予測判断ですね。つまり、本当は再審公判を開いてみないと有罪になるか無罪になるか分かりませんけれども、無罪になるだろうと、無罪になることが明らかだという判断をしたのに対して明らかではないと争っているわけなんですが、元々予測判断なのに、それが取り消されるべき十分な蓋然性がある場合といったところで、これまた予測判断になりまして、結局のところ、幅があるものですから一義的に決まらないんですね。

そうなりますと、これ判断者は検察官で検察官の行為規範だと言われていますから、検察官としては十分な根拠がありますと言ってしまったら、それが間違っているということが言えないわけなんです。よほどのことがない限り、その判断が正しいとか間違っているとかいうことを裁判所が判断すること自体が難しい、そういう条文になってしまっていると思います。

ですから、二番で原則、例外が逆転する可能性がないのかというところが私もまさに懸念しているところでございまして、条文の上では四百五十条から四百四十八条一項の決定が削除され、四百五十条の二が設けられたことによって、あくまで例外なんだというふうに見えますけれども、では検察官、これまで十分な根拠なく抗告したことがあったのですかという質問に対しては答えない。過去の抗告においてどれが十分な根拠がなかったとされるのですかという質問にも答えない。さらには、福井事件における第一次再審請求の場合の抗告、これ証拠を隠して抗告しているわけですから違法になるんじゃないですか、不当じゃないですかという質問にも答えない。

こうなりますと、この規定を設けることで一体どのような場合に抗告が制限され得るのかということすら明らかでありませんから、これではやはり実効性がない、単なる期待にすぎないんではないかと思います。

最後の三点目のそれなりの根拠ですけど、まさに令和八年四月、今年の四月に自民党の党内審査に示された法務省の報告書によれば、福井事件のこの第一次再審請求事件の即時抗告には相当の根拠があった、相応の理由があったと、こう書かれているんですね。これ、「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書を開示せずに、第一次再審請求の再審開始決定に対して抗告して取り消させているんですね。第二次再審請求でそれは不正の所為だと、罪深い不正の所為だと言われていることについて、相応の理由があったといまだに言っているわけなんです。ですから、これ、それなりの理由があったということですよね、検察官としては。このような場合に裁判所はそれなりの理由がなかったとして棄却することはやはり難しいんだと思います、この条文では。

ですから、条文としては四百二十六条前段の手続違反として棄却すべきだと、事実の取調べせずに棄却すべきだということになるんですけれども、現実に、じゃ、それができるかと言われた場合に、裁判所としてはなかなか厳しい判断を迫られるだろうと思います。

ですから、もし原則、例外にしたいんであれば、少年法三十二条の四のように、抗告受理申立て制度にすれば、二週間以内に受理の有無を判断しますので、まずその抗告があった段階で判断ができるんですけど、これそういう制度になっておりませんから、抗告してしまったら終わりです。抗告した者勝ちという制度になってしまうんではないかと危惧しております。

以上です。

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