まず、十分な根拠といいましても、こういった用語が用いられている例はほかの法令にはございません。もうこの条文だけでございます。
そして、この十分な根拠とは何かについて、佐藤刑事局長は現決定が取り消されるべき蓋然性が高い場合を言うのだと説明していますが、六号再審、つまり無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときのうち、この明らかなというのは元々が予測判断ですね。つまり、本当は再審公判を開いてみないと有罪になるか無罪になるか分かりませんけれども、無罪になるだろうと、無罪になることが明らかだという判断をしたのに対して明らかではないと争っているわけなんですが、元々予測判断なのに、それが取り消されるべき十分な蓋然性がある場合といったところで、これまた予測判断になりまして、結局のところ、幅があるものですから一義的に決まらないんですね。
そうなりますと、これ判断者は検察官で検察官の行為規範だと言われていますから、検察官としては十分な根拠がありますと言ってしまったら、それが間違っているということが言えないわけなんです。よほどのことがない限り、その判断が正しいとか間違っているとかいうことを裁判所が判断すること自体が難しい、そういう条文になってしまっていると思います。
ですから、二番で原則、例外が逆転する可能性がないのかというところが私もまさに懸念しているところでございまして、条文の上では四百五十条から四百四十八条一項の決定が削除され、四百五十条の二が設けられたことによって、あくまで例外なんだというふうに見えますけれども、では検察官、これまで十分な根拠なく抗告したことがあったのですかという質問に対しては答えない。過去の抗告においてどれが十分な根拠がなかったとされるのですかという質問にも答えない。さらには、福井事件における第一次再審請求の場合の抗告、これ証拠を隠して抗告しているわけですから違法になるんじゃないですか、不当じゃないですかという質問にも答えない。
こうなりますと、この規定を設けることで一体どのような場合に抗告が制限され得るのかということすら明らかでありませんから、これではやはり実効性がない、単なる期待にすぎないんではないかと思います。
最後の三点目のそれなりの根拠ですけど、まさに令和八年四月、今年の四月に自民党の党内審査に示された法務省の報告書によれば、福井事件のこの第一次再審請求事件の即時抗告には相当の根拠があった、相応の理由があったと、こう書かれているんですね。これ、「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書を開示せずに、第一次再審請求の再審開始決定に対して抗告して取り消させているんですね。第二次再審請求でそれは不正の所為だと、罪深い不正の所為だと言われていることについて、相応の理由があったといまだに言っているわけなんです。ですから、これ、それなりの理由があったということですよね、検察官としては。このような場合に裁判所はそれなりの理由がなかったとして棄却することはやはり難しいんだと思います、この条文では。
ですから、条文としては四百二十六条前段の手続違反として棄却すべきだと、事実の取調べせずに棄却すべきだということになるんですけれども、現実に、じゃ、それができるかと言われた場合に、裁判所としてはなかなか厳しい判断を迫られるだろうと思います。
ですから、もし原則、例外にしたいんであれば、少年法三十二条の四のように、抗告受理申立て制度にすれば、二週間以内に受理の有無を判断しますので、まずその抗告があった段階で判断ができるんですけど、これそういう制度になっておりませんから、抗告してしまったら終わりです。抗告した者勝ちという制度になってしまうんではないかと危惧しております。
以上です。
16高高平奇恵一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士
私も田岡参考人と意見を同じにしています。
若干付け加えさせていただきますと、この職権主義と言われる再審請求審の一つの特徴なんですが、これ、立証責任を請求人が負っているんですね。これ、非常に重たい責任です。職権主義構造で、かつ請求人にこれだけ重い。ただ主張すればいいというわけではない、主張すれば裁判所が証拠を探して解決してくれる、そんな制度ではないんです。立証を請求人自身がしなくてはならないんです。そうであるからには、この立証ができるようにする手続保障は制度に必然的に組み込まれるべきであると考えているということを付け加えさせていただきます。
以上です。
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古庄玄知(自民)
ところで、証拠開示の問題と、もう一つ、自民党の内部の議論のときに出てきたのが検察官抗告をどうするかという問題で、検察庁の方は、原則として検察官抗告はできないと、できないというか、条文からその検察官の再審決定に対する部分を落としたという、そういう処理をしたんですが、ただ、十分な根拠がある場合は例外的に認めると、そういうふうな改正案を作りました。
そこで、またこれも三人の先生方にお伺いしたいんですけれども、この十分な根拠ということの意味内容、それと、これによって原則、例外の関係が間違いなく維持されるのかどうか。もう一つ、十分ではないけれどもそれなりの根拠が…
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18成成瀬剛東京大学大学院法学政治学研究科教授
お答え申し上げます。
まず一点目の十分な根拠の意味につきましては、検察官が不服申立てをすることにより再審開始決定が取り消される蓋然性が高いことを裏付ける合理的な根拠がある場合を指すと考えております。具体的には、重大な事実誤認等があり、それらに関する誤りの主張が上級審に受け入れられて再審開始決定が覆ることとなる蓋然性が高い場合を指すと考えております。
二点目ですけれども、この規定を設けることによって原則禁止、そして例外的に許されるという運用が果たして担保されるのかという点ですが、私自身は十分に担保可能であるというふうに考えております。
今回の閣法にお…
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- (上の発言)
19田田岡直博香川県弁護士会弁護士
まず、十分な根拠といいましても、こういった用語が用いられている例はほかの法令にはございません。もうこの条文だけでございます。
そして、この十分な根拠とは何かについて、佐藤刑事局長は現決定が取り消されるべき蓋然性が高い場合を言うのだと説明していますが、六号再審、つまり無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときのうち、この明らかなというのは元々が予測判断ですね。つまり、本当は再審公判を開いてみないと有罪になるか無罪になるか分かりませんけれども、無罪になるだろうと、無罪になることが明らかだという判断をしたのに対して明らかではないと争っているわけなんですが、元々予測判断なのに、それが取り消されるべき十分な蓋然性がある場合といったところで、これまた予測判断になりまして、結局のところ、幅があるものですから一義的に決まらないんですね。
そうなりますと、これ判断者は検察官で検察官の行為規範だと言われていますから、検察官としては十分な根拠がありますと言ってしまったら、それが間違っているということが言えないわけなんです。よほどのことがない限り、その判断が正しいとか間違っているとかいうことを裁判所が判断すること自体が難しい、そういう条文になってしまっていると思います。
ですから、二番で原則、例外が逆転する可能性がないのかというところが私もまさに懸念しているところでございまして、条文の上では四百五十条から四百四十八条一項の決定が削除され、四百五十条の二が設けられたことによって、あくまで例外なんだというふうに見えますけれども、では検察官、これまで十分な根拠なく抗告したことがあったのですかという質問に対しては答えない。過去の抗告においてどれが十分な根拠がなかったとされるのですかという質問にも答えない。さらには、福井事件における第一次再審請求の場合の抗告、これ証拠を隠して抗告しているわけですから違法になるんじゃないですか、不当じゃないですかという質問にも答えない。
こうなりますと、この規定を設けることで一体どのような場合に抗告が制限され得るのかということすら明らかでありませんから、これではやはり実効性がない、単なる期待にすぎないんではないかと思います。
最後の三点目のそれなりの根拠ですけど、まさに令和八年四月、今年の四月に自民党の党内審査に示された法務省の報告書によれば、福井事件のこの第一次再審請求事件の即時抗告には相当の根拠があった、相応の理由があったと、こう書かれているんですね。これ、「夜のヒットスタジオ」の捜査報告書を開示せずに、第一次再審請求の再審開始決定に対して抗告して取り消させているんですね。第二次再審請求でそれは不正の所為だと、罪深い不正の所為だと言われていることについて、相応の理由があったといまだに言っているわけなんです。ですから、これ、それなりの理由があったということですよね、検察官としては。このような場合に裁判所はそれなりの理由がなかったとして棄却することはやはり難しいんだと思います、この条文では。
ですから、条文としては四百二十六条前段の手続違反として棄却すべきだと、事実の取調べせずに棄却すべきだということになるんですけれども、現実に、じゃ、それができるかと言われた場合に、裁判所としてはなかなか厳しい判断を迫られるだろうと思います。
ですから、もし原則、例外にしたいんであれば、少年法三十二条の四のように、抗告受理申立て制度にすれば、二週間以内に受理の有無を判断しますので、まずその抗告があった段階で判断ができるんですけど、これそういう制度になっておりませんから、抗告してしまったら終わりです。抗告した者勝ちという制度になってしまうんではないかと危惧しております。
以上です。
20高高平奇恵一橋大学大学院法学研究科教授/弁護士
おおむね田岡参考人と同じ意見なんですが、少し別の角度から補足をしたいと思います。
先ほど私の意見陳述の中でも申し上げましたが、これ十分な根拠があるか、六号再審の場合について考えていただきたいんですね。十分な根拠があるかどうかと、再審請求に理由があるかどうかって、結局、合理的疑いを生じさせるということについて、そういうふうなものじゃ、あるんだ、ないんだということに、これ自信があります、ありませんみたいな主観的なところで、何を見るか、裁判所、じゃ、何を見るかというと、やっぱりこの再審請求の理由があるかと全く同じ内容を審査するということになるんですよね。審査…
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伊藤孝江(公明)
時間になっております。
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古庄玄知(自民)
はい。
じゃ、時間が来たので終わります。ありがとうございました。
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