星野美子公益社団法人日本社会福祉士会参事

2026年6月11日・第221回国会 参議院 法務委員会 第14号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 7 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 110 発言)

日本社会福祉士会参事の星野美子と申します。

私は、厚生労働省が成年後見制度利用促進専門家会議において第二期基本計画の策定の議論を開始した令和三年度から、専門家会議委員として参加しております。そして、法制審議会開始前の在り方に関する研究会、さらに、法制審議会にも参加をさせていただきました。

本日は、このような大変貴重な場で、社会福祉の現場で実践を行う者として報告の機会をいただきましたこと、深く感謝申し上げます。

本会の活動につきましては、配付しております二つの日本社会福祉士会ニュースを御参照ください。

社会福祉士会は、後見人等を受任する会員に対して必要な研修を行うとともに、受任後のバックアップ体制を備えた組織である、ぱあとなあという組織を全都道府県社会福祉士会に設置しています。

お手元のニュース二百十八号六ページに社会福祉士の受任状況についての統計資料がございますが、名簿登録者数は現在、最新の情報では一万人を超えております。社会福祉士の受任状況の特徴ですが、身寄りがない方又は頼れる身寄りがない方の生活支援全般に関わる身上保護の課題に対して選任されることが多いです。虐待対応における支援の一環として後見制度につながる事案もあります。首長申立て事案の受任の割合が四〇%弱となっていますが、このような事情が影響していると考えます。

今般の法改正においては終わることができる制度に変わろうとしているわけですが、金融機関の対応や現状の地域福祉のありようでは本当に終わらせることができるだろうかという懸念が強くあります。

厚生労働省においては、これらに対応するために、日常生活自立支援事業の見直し、新たな第二種社会福祉事業の創設について検討を進めておりますが、判断能力があるうちにこういった課題に備えて、自ら契約できる高齢者等を対象とした施策への動きは私が関わっている地域でも検討が進んでおりますが、法改正後に補助制度が終了することを見越した判断能力が不十分な方に対する事業、対応についての検討はほとんど手が着いていないと言ってよい状況ではないかと考えます。

社会福祉士は、お配りしている資料一枚目に記載しているとおり、ソーシャルワーカーとして行政や地域の様々な相談支援機関に配属されておりますが、今回、法改正の下では名称が地域権利擁護相談支援センターとなることが予定されている中核機関ですね、現在の中核機関においても社会福祉士などを中心として、後見人等候補者の受任調整の前の入口の権利擁護支援が必要な方の相談を受けるところから丁寧な関わりをしております。

私がアドバイザーとして関わっている自治体においては、後見制度ありきではなく、その方が求めていること、金銭管理、契約行為だけではない、御本人の状況や状態を総合的に様々な視点から情報を集めて、本人の意向を確認しながら、本人のニーズに対応した支援の在り方を検討しています。

地域包括支援センターや障害者相談支援センターなどにおいては、制度の利用が必要と思われる方を発見し、適切な制度利用に向けてつなげるという支援が今も行われています。このように、社会福祉士は現場での相談支援業務を担う立場と後見人等を受任するという二つの立場、役割を併せ持っている専門職です。

今回の法改正についての受け止めは、配付資料の二枚目に、会長声明に記載しております。社会福祉士として求めてきた意思決定支援の具体化であるとか類型の一元化、期間を設ける、見直しの機会を設ける、こういったことが今回の改正案に多く採用されたことを非常に高く評価をしていますが、今日特にお伝えしたいのは、この会長声明の後半の部分です。本改正の実効性を高めるためには、民法のみならず、社会福祉法を始めとする周辺関連法の改正や諸制度の整備が不可欠であるということ、そして、この改正が社会の意識変革を促し、制度を利用している方が特別な存在とならない、真の共生社会が実現することを目指しているということであり、法改正はゴールではなくてあくまでもスタートであるということをお伝えしたいと思っています。

ここから、今回の改正で更に向き合わなければならないと考えている課題を三点述べたいと思います。

一つは、民法改正と一体的改革が必要と言われている社会福祉法を中心とした福祉、医療の領域における取組です。

この取組のいかんによって今回の民法改正が地域共生社会の実現に資する改正となるのか、有名無実となるのか、その方向性が決まると言っても過言ではないと考えます。地域においては、これから制度につながった方の状況の変化を支援チームが把握して、変化に応じた対応が可能となるような支援、また制度の利用が終了した後の権利擁護支援の体制や環境の整備といった、これまで例外的であった取組が当たり前になるような仕組みを構築していくことが求められています。申立て時に活用がされている本人情報シートの出口版が必要だと思っています。

二点目は、特定補助人の選任が必要とされる状態像の方がどのように選定されていくのかということと、一度特定補助人が必要という審判を受けた方が、特定補助人ではなく補助人の支援が受けられるように変化を目指していくこと、さらには、制度の必要性がなくなったときには終了できること、これは社会の仕組みの構築が必要です。

現行の後見類型の方を少し事例を御紹介したいんですが、私が関わっている類型の方では、後見類型の方でも、まとまったお金の管理をする仕組みがあれば御自分でキャッシュカードを使ってお金を下ろす、その人なりの日常生活を独居で送っていらっしゃる方もいられます。障害者雇用で就労継続し、毎年年末に海外旅行に一人で行かれる方もいらっしゃいます。このような方が現実に後見類型ということで審判がなされているわけです。

法改正があれば、包括的な代理権がなくなる、特定補助人が必要という判断は限定的、例外的なものであるという趣旨を実現していくためには、本人ができること、やっていたことを奪わないという私たち一人一人の意識の変革が必要だと思っています。意識変革なくして社会の仕組みの再構築は実現できないと考えます。端的に言えば、現行の後見類型の方がそのまま新制度で特定補助人選任にならないよう、法が施行された後に注視していきたいと考えております。

三点目です。今回の法改正が制度を必要としている方が使いやすいものになることを求めて発言しますが、衆議院の法務委員会附帯決議十、十一で触れられている報酬の点について発言します。

これまでも専門家会議において当事者の立場から、そして本日も久保参考人から、支援受けたいけれど報酬は負担できない、報酬が高額過ぎるという話はずっと出ております。本人の財産状況から報酬を負担することが困難な場合において、国は成年後見制度利用支援事業というものを用意しておりますが、その実態は、市区町村の予算も一部必要となることから、地域差が拡大しています。

法改正が実現しますと、補助人には限定的な代理権が付与されることとなり、財産管理は希望しないけれど、身上保護の面での医療や福祉サービスの利用契約などを本人が希望する、またその必要性があると判断されて申立てが進むことが想定されます。

報酬を負担することが難しい案件というものは、すなわち、専門職が補助人として業務を行ったときに家庭裁判所が決定した適正な報酬を受領できないということにつながり、担い手の確保ができなくなり、制度の趣旨に沿った安定的、継続的な体制が維持できなくなるのではないかと懸念しています。

先ほどお示しした配付資料、ニュース二百十八号の七ページのところに、四の②、細かい字で恐縮ですが、四の②に当会会員が受任している事案の報酬受領の状況について示しております。現行法においても、報酬が全額受領できない、一部しか受領できていないという事案が一定数、社会福祉士会の中では全体の五%程度存在しております。

報酬額については、改正法が施行されますと、必要なときに有機的に利用をすることになりますので、これまでのように大体月額幾らという考え方では対応できないことは明らかです。

法改正において、本人の資力その他の事情に加えて、補助の事務の内容というものが追記されたことによって、家庭裁判所の報酬額の決定においても助成が期待できるという意見もあります。しかし、そもそも補助開始の審判を受けた者の財産の中からということを見直す必要はないのでしょうか。

最後に、今回の法改正は、本人本位の制度への変換という大きな前進であると受け止めております。しかし、その理念を実現するためには、民法改正だけでなく、社会福祉法の理念に基づく地域福祉施策や高齢者、障害者虐待防止法、精神保健福祉法、消費者を保護する法律などの周辺法の見直し、本人の生活を支えるあらゆる施策との連携が不可欠です。

本日申し上げた三つの課題、地域福祉の仕組みづくり、特定補助人の運用の在り方、報酬に関する課題は、いずれも法務行政だけで解決できるものではないと承知しております。是非、省庁横断的な議論を継続していただきたいと切にお願いをいたします。

御清聴ありがとうございました。

前後のやりとり

3の発言を見る

11の発言を見る