北村滋北村エコノミックセキュリティ合同会社CEO/元国家安全保障局長・内閣特別顧問/元内閣情報官

2026年5月19日・第221回国会 参議院 内閣委員会 第8号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 2 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 94 発言)

私は、国家情報会議設置法案につきまして、主として情報統合と統制の制度化という観点から、賛成の立場から意見を申し述べます。

現在の安全保障環境において、軍事、外交、経済、技術、サイバーその他の分野にまたがる情報を政府全体として統合し、適時適切に政策判断へ結び付ける体制が不可欠であります。他方で、我が国の情報機能は各省庁に分散しており、制度上の統合と統制が十分でないという課題を抱えてまいりました。

本法案の内容は、内閣に国家情報会議を設置し、その事務を担う国家情報局を内閣官房に置くことにより、重要情報活動及び外国情報活動への対処に関する司令塔機能を制度上明確化しようとするものと理解しております。

以下、第一に情報活動に対する政治的統制、第二に情報統合機能の強化、第三に政策部門と情報部門との役割整理、第四に情報保全制度との接続と国際連携の観点から賛成の理由を申し述べます。

第一の柱が国家情報会議の設置と情報活動に対する統制であります。

本法案の第一の意義は、秘匿性の高い情報活動について、政治レベルの統制を法制度の中に明確に位置付ける点にあります。

法案では、国家情報会議を内閣に設置し、内閣総理大臣が議長を務めることとされています。また、内閣官房長官、国家公安委員会委員長、法務大臣、外務大臣、財務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、防衛大臣などが議員として参画することとされております。

この仕組みは、情報活動を一部の実務機関に委ねるのではなく、政府全体の責任において取り扱う枠組みを明確にするものであります。情報活動の強化は必要ですが、その正当性を支えるのは、権限そのものではなく、適切な統制の仕組みであります。

その意味で、国家情報会議を法定の機関として位置付けることは明確な意義があります。もっとも、将来における情報収集権限や活動領域の拡張のありようによっては、行政府内の統制だけでは十分でなくなる可能性も出てまいりましょう。その際には、国会による監視や検証の在り方についても議論がなされるものと考えております。

しかしながら、そのことを前提としても、本法案は情報活動の制度化に向けた重要な第一歩として評価できるものと考えます。

二つ目の柱は、情報統合機能の強化についてであります。

第二の意義は、各省庁に分散している情報を政府全体として統合的に取り扱うための法的基盤を整える点にあります。

従来の我が国の情報体制では、各機関がそれぞれ情報を保有していても、それを横断的に集約し、分析し、政策判断に結び付ける制度が十分であったとは言い難い状況にありました。

本法案では、この課題に対し、国家情報会議と国家情報局を制度上位置付けることで対応しようとしております。とりわけ、法案第七条は、内閣官房長官及び関係行政機関の長に対し、会議の調査審議に資する資料及び情報を適時に提供することを求め、さらに、議長の求めに応じて説明その他必要な協力を行わなければならないと定めております。これは、省庁間の情報共有を慣行に委ねるのではなく、法的義務として明確にしたものと言えます。

また、国家情報局は、会議に関する事務を処理するだけでなく、重要情報活動及び外国情報活動への対処に関する企画立案、総合調整、内閣の重要政策に関する情報の収集調査などを担うものとされております。

情報統合は、個々の機関の機能や専門性を否定するものではなく、それぞれの知見を政府全体の判断へ結び付けるための仕組みであります。その意味で、本法案は組織法上の基盤整備として支持し得る内容を備えていると考えます。

三番目の柱は、政策部門と情報部門の役割整理についてであります。

第三の意義は、政策立案を担う部門と情報収集、分析を担う部門との役割分担を制度上より明確に整理しようとしている点であります。

情報分析は政策判断に資するものである一方、政策の都合に過度に従属すれば、その客観性が損なわれるおそれがあります。したがって、両者の適切な距離と関係を制度として整えることが重要であります。

本法案では、国家情報局長を法的に位置付けることにより、情報機能の責任主体をより明確にするものと理解できます。これまでの体制では、情報の集約や評価が制度よりも運用や個人の力量に左右されやすい面があると指摘されてきました。国家情報局長を制度上明確に位置付けることには情報機能の安定性と継続性を高める意味があります。

一方、不肖私は、国家安全保障局長、内閣情報官として、政策部門と情報部門の双方の事情を存じております。この観点から見ましても、本法案が両部門を対立させるものではなく、両者の役割を整理し、より適切な関係を築くための制度整備であると考えるところであります。

四番目の柱は、情報保全制度との接続と国際連携であります。

第四の意義は、既存の情報保全制度と接続しつつ、国際的な情報連携の基盤を強化する点にあります。

現代の安全保障上の脅威は国境を越えており、情報連携の重要性は一層高まっております。我が国では、特定秘密の保護に関する法律に加え、重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律が施行されており、機微情報を保護し活用するための法制度は段階的に整備されてまいりました。

本法案は、そうした制度の上に、情報を統合し分析する司令塔機能を位置付けようとするものであります。その意味で、保全と活用の双方を視野に入れた制度整備として理解することが可能です。

国際的な情報連携においては、秘密保全能力に加え、政府内で情報を統合し、継続的にやり取りできる明確な窓口の存在が重要であります。国家情報局の設置は、その基盤整備としての効果が強く期待されます。米国、英国、豪州といった同盟国、そして同志国においては、今般の我が国における情報制度改革を必ずや歓迎するものと信ずるところであります。

以上、申し述べましたとおり、国家情報会議設置法案は、情報活動に対する統制、各省庁の情報集約、政策部門と情報部門の役割整理、情報保全制度との接続、国際連携という点において、我が国をめぐる厳しく複雑な安全保障環境をして現行体制の課題に対応しようとする法案であります。もちろん、今後の審議におきましては、調査審議事項の範囲、プライバシーへの配慮、情報の中立性、監督の在り方などについて、なお丁寧な議論が必要です。しかし、これらの論点を踏まえてもなお、本法案には制度整備として強く支持すべき意義があるものと考えております。

以上をもって、簡単ではございますが、私の意見陳述といたします。御清聴ありがとうございました。

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