三谷秀史元内閣情報官/元拉致問題対策本部事務局長

2026年4月16日・第221回国会 衆議院 内閣委員会 第5号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 2 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 113 発言)

皆さん、おはようございます。

国家情報会議設置法案の審議に当たりまして、参考人として招致いただいたことを光栄に存じ、感謝申し上げます。

私、一九七四年に警察庁に入りまして、以後、いわゆる外事畑に長く勤務いたしました。二〇〇六年から二〇一〇年にかけまして、小泉、安倍、福田、麻生、鳩山の五人の総理の下で第三代内閣情報官を務めさせていただきました。さらに、その後、鳩山、菅、野田、そして二回目の安倍総理の下で拉致問題対策に従事させていただきました。この二つの公務員としてのいわゆるラストポジションで、インテリジェンスの提供側とインテリジェンスの受取側の両方を経験させていただきました。あえて申し上げれば、そのインテリジェンスコミュニティーの誇るべき部分と足らざる部分、両方を体感させていただいたと思っております。本日は、その体感に基づきましてお話し申し上げたいと存じます。

まず、本日議題となっております国家情報会議設置法案につきましてでございますが、戦後八十年の我が国インテリジェンスの組織や機能の変遷、これもあえて申し上げれば、強化や改革の中で、エポックメイキング、画期的なものと感じております。この点につきまして、お手元の資料に基づきましてお話し申し上げたいと思います。その中で、委員の先生方、多くは既に御承知の内容にも触れてしまうかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。

一国のインテリジェンスの体制と能力は、その国の主権と安全保障に対する思い入れの具体化と言えようかと思います。我が国におきましても、戦後、昭和二十七年、占領解除、主権回復とほぼ同時に、現在の五つのコア情報機関そのものや、あるいはその前身の機関が創設されました。しかし、その後、約五十年、二、三の例外を除きまして大きな変化、改革はございませんでした。インテリジェンスの多くの分野は、資料には、なきものと、ほぼなきものと書かせていただきましたが、ないもの同然の扱いを受け、ある意味で無視、放置されてきたと言っても過言ではないかと存じます。

その原因、要因は幾つもあろうかと思います。資料の中では三つだけ書かせていただきました。これに限るものではないと思いますが、一番大きな要因は、やはり、冷戦構造下での安全保障政策、すなわち、ありていに申し上げて、米国の安全保障の傘の下で経済優先を図るという国家戦略にあったと存じます。

二、三の例外と申しましたが、その一つが中曽根政権時代でありまして、今も行われております総理ブリーフや合同情報会議はこの頃正式にスタートいたしました。その後、昭和の終わりから平成の初頭にかけまして、冷戦終結などを契機として強化、改革の機運が高まり、例えば、亡くなられた町村先生は幾つかの提言をリードされました。その町村先生が繰り返し言っておられたのが、資料にあります、上がらない、回らない、漏れるの三つでございます。

また、特定のインテリジェンス機能がそもそも欠けているということにつきましても、多くの識者から御指摘を受け始めたのもこの頃でございました。当時、インテリジェンス強化を語る者たちは、この欠点を解決すれば日本のインテリジェンス機能は強化されると考えたものと思います。そして今日に至ったというふうに考えております。

資料の二ページに移りますが、このような流れの中で、阪神大震災を契機に内閣情報集約センター、北朝鮮のミサイル発射に伴い内閣衛星センターが設置されるなど、順次、組織、能力強化が推進されました。

そして、平成二十年、安倍政権の下で、安全保障会議を始めとする国家安全保障に関する官邸の機能強化が打ち出されたのを契機に、インテリジェンスコミュニティーの総意として、官邸における情報機能強化の方針が策定されました。この官邸における情報機能強化の方針は、我が国インテリジェンスコミュニティーの将来像をコミュニティー自ら考え、提言したものといたしましては、恐らく史上初めて、かつ今日まで唯一のものと思っております。ある意味では、インテリジェンスコミュニティーの決意表明であったと思います。

ただ、自分たちで考え、自分たちで提言したものでありますので、どうしても限界がありまして、資料にありますように、二つのもの、対外情報機関と秘密保全法制については、この提言では積み残しとなりました。ただ、この積み残し二つにつきましては、後の、二回目の安倍政権におきまして一定の改革をしていただいたと存じております。

さて、冒頭の発言で、この法案はエポックメイキングであると申し上げましたが、我が国のインテリジェンス能力が他国に比較して低いのではないかと内外から指摘され続けておりますが、この法案は、四半世紀にわたる段階的、一歩一歩の強化、改革の一つの到達点であると存じます。この法案によって設置される国家情報会議と国家情報局が中心となって、更に高い頂上を目指して、国民の理解を得つつ、更なる高みを目指していただきたいと祈念いたします。

以上を踏まえまして、残りの時間、法案の中身について感じることを申し述べます。

まず、インテリジェンスに関する政治のリーダーシップについてでございます。

途中を省略させていただきまして、私自身の経験からしまして、先ほど申し上げた内閣情報機能強化の方針の際の二つの積み残し、これが出てしまった一つの理由は、今回御検討いただいている内閣情報会議のようなものが、政治のリーダーシップがなかったから積み残してしまったと言ってしまってもいいのではないかと、私個人としては感じております。

次に、情報アクセスと総合調整に触れます。

これにつきましては、従来から、内閣情報調査室は一定の連絡調整権は持ってまいりました。しかし、その連絡調整権を担保するためには、実は、内閣情報官ほか、内閣情報室の幹部たちは大変な苦労をしてまいりました。情報コミュニティーの意思を統一するという仕事は、そう並大抵の仕事ではございません。そういう中で、今回、従来から持っておった連絡調整権を総合調整権に強化していただくということは大変意義深いものと存じます。

最後に、私ごとで大変恐縮ですが、警察庁外事課の一警部として、インテリジェンスの世界に足を踏み入れたのは昭和五十一年でございました。それ以来、日本のインテリジェンス機能を何とか強化したいと願いつつ、時として、改革の一端を担わせていただいたり、新組織をつくらせていただいたり、いろいろなことをしてまいりましたが、そういう者の一人として今私が感じておりますのは、はるけくも来つるものかなという感慨でございます。多くの老練、ベテランインテリジェンスの経験者たちが同じような思いであることをおもんぱかりながら、私の発言とさせていただきます。

御清聴ありがとうございました。(拍手)

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