谷口将紀東京大学教授

2026年6月22日・第221回国会 衆議院 政治改革に関する特別委員会 第6号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 4 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 74 発言)

この度は、意見陳述の機会をお与えいただき、誠にありがとうございます。

本日は、主に企業・団体献金の受皿規制の論点について意見を述べさせていただきます。

前提として、政治資金制度は、選挙制度と並ぶ我が国民主政治の基盤を成す制度でございまして、全会一致とまではいかなくても、与野党の幅広い合意の下で進めることが肝要でございます。

そのためには、まずもって、与党は謙虚であらねばいけません。

衆法第一二号は、数年にわたり議論を重ねてきたにもかかわらず、国会として結論を得ることができず、この期に至って学識経験者による合議制の組織に検討を委ねようとするものであります。平成の政治改革は、リクルート事件発覚を受けて、当時の竹下総理において速やかに第八次選挙制度審議会を設置する意向が表明され、それを出発点として改革が進められた事例でございました。今回の法案とは、改革における有識者会議の位置づけが根本的に異なっております。

まして、世論調査に示されている企業・団体献金に対する国民の厳しい視線や国政に対する深刻な不信感を前にしながら、ここまでの委員会審議においては、一連の政治資金問題への対応がなお道半ばであることに対する遺憾の表明はほとんど見られません。そのような状況にあって、さらに、企業・団体献金の規制を強化する立法事実が存在しないなどという主張がなされることについては、私は違和感を覚えざるを得ません。

衆法第一二号につきましては、少なくとも次の二点の修正が必要と考えます。

第一に、第二条第二項の「前項の検討は、国会に置かれる学識経験を有する者により構成される合議制の組織において行われるものとする。」との規定は、前項の検討は、政治資金監視委員会において行われるものとすると改めるべきであります。

御案内のとおり、政治資金につきましては、既に総務省に政治資金適正化委員会が設置されております。私も三期九年の長きにわたって委員を務めさせていただきましたが、それだけ当該分野の専門家は限られております。その上、更に政治資金監視委員会を設置し、加えて、別途、学識経験を有する者により構成される合議制の組織を設けるとすれば、組織の冗長さは避けられません。これは、後に審議される可能性のある衆議院議員定数削減法案の根底にあるはずの、簡素で効率的な統治機構という考え方にも反するものではないでしょうか。

第二に、第三条の「前条第一項の結論に基づき、必要があると認められるときは、速やかに法制上の措置その他の措置が講じられるものとする。」との規定には、勧告の尊重義務を加えるべきであります。

もちろん、国権の最高機関である国会を法的に拘束することはできません。しかし、国会自らが長年にわたり結論を得ることができず、第三者機関の知見に依拠せざるを得なくなった経緯に照らせば、必要があると認められるときに措置を講じるという消極的な規定にとどめるのではなく、勧告を尊重して措置を講じる旨を明記することが国民に対する誠実な態度ではないでしょうか。

一方、中道改革連合・無所属及び国民民主党・無所属クラブ提出の衆法第一号については、このままでは成立の見通しが立たない以上、企業・団体献金を受けることができる政党支部として、都道府県ごとに一つの支部のみを指定できることとした根底にある考え方をより明確にこの場においてお示しいただく必要があります。

私は、この際、これまでの両党における議論の過程を是とした上で、政党組織の階層論としてではなく、企業・団体献金の受皿に求められる機能論としての議論を深めるのがよいと考えます。

もとより、政党の組織運営の在り方は各党に委ねられております。しかし、企業・団体献金については、既に量的制限や質的制限を始めとする様々な規制が加えられております。そのため、献金の受皿となる組織には、これらの規制への適法性を随時確認できるようなガバナンス体制が求められます。

これまで報じられてきたような様々な事案を踏まえれば、このようなガバナンスは、年に一回の会計監査という事後的な統制のみでは足りません。常任の会計監事を置くなどの内部統制機能を十分に備えた組織であることが必要ではないでしょうか。

大規模な政党であれば、都道府県支部よりも下位の支部であってもそのような体制を整備できるかもしれませんし、逆に、小規模な政党にあっては、都道府県支部であっても十分な体制を整えられない場合もあり得ます。この際、重要なのは、組織の階層ではなく、企業・団体献金の受皿として必要な機能を備えているかどうかであります。

この点について、自民党は、過去の法案において、指定政党支部という考え方を提示されております。中道改革連合及び国民民主党におかれても、どのような機能を備えた支部であれば企業・団体献金の受皿となり得るのか、その考え方を明らかにしていただきたいと思います。

その上で、与党との間で折り合える部分があるのであれば、衆法第一号を修正した上で成立させる道筋も見えてまいります。他方、見解の隔たりが大きく、衆法第一二号で言う「学識経験を有する者により構成される合議制の組織」に検討を委ねることになった場合であっても、この論点をめぐる与野党間の議論の記録は、同組織における今後の検討を方向づける重要な資料となります。

政治資金に関して本委員会で意見を述べさせていただくのは、実に四回目でございます。しかも、御依頼をいただいた政党は、自民党、当時与党であった公明党、国民民主党、そして中道改革連合と毎回異なっております。この一事をもってしても、与野党の幅広い合意形成は可能と考えます。

委員の皆様におかれましては、与野党双方が、いま一段の御努力と、何よりも御決断を持って合意形成を図ってくださいますようお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。

ありがとうございました。(拍手)

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