森本宏法務省刑事局長

2025年5月13日・第217回国会 参議院 法務委員会 第8号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 131 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 239 発言)

現行刑事訴訟法の下では、捜査機関が証拠を押収した場合に、その押収処分が事後的に取り消されたとしても、当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされておらず、直ちに裁判において証拠として利用することはできなくなることともされておりません。

最高裁判例におきましては、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合に初めて証拠能力が否定されるという取扱いが確立しております。

このいわゆる違法収集証拠排除法則は、証拠物は押収手続が違法であってもその証拠価値に変わりはなく、その押収手続に違法があるとして直ちにその証拠能力を否定することは事案の真相解明に資するものではなく相当でないと考える一方で、事案の真相解明も、個人の基本的人権の保障を全うしつつ適正な手続の下でなされなければならないと考えられることを踏まえたものであり、刑事裁判実務上確立しているものであります。

また、強制処分が違法であるとして事後的に取り消される場合であっても、その違法の程度は比較的軽微なものから令状主義の精神を没却するような重大な違法なものまで様々であり、違法と判断された強制処分により取得した証拠物の複製等を一律に廃棄、消去しなければならないとすることは、ただいま申し上げた現行刑事訴訟法における仕組みや判例法理に照らし相当でないと考えております。

また、捜査や公判に必要なものとして取得された証拠は、捜査中から刑事事件終結後に至るまで、例えば後の再審請求審における利用等に備えてありのままの、ありのまま記録として保管、保存されるべきものであり、それが現行制度の基本的な考え方であるところ、このような取扱いは刑事手続の適正かつ円滑な遂行のために相当なものと考えております。

本法律案による改正後の刑事訴訟法においては、こうした我が国の刑事法の基本的な考え方との整合性を考慮し、実質的な相当性にも配慮して、違法であるとして取り消された電磁的記録提供命令により取得された電磁的記録の消去の規定は設けていないところでございまして、今述べたような点から、その理由が弱いというふうには考えておりません。

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