森本宏法務省刑事局長

2025年5月13日・第217回国会 参議院 法務委員会 第8号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 46 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 239 発言)

若干繰り返しになるところもございますが、通信傍受は、先ほど申しましたとおり、一定の期間にわたって現に行われている他人間の通信の内容を知るため、当該通信の当事者のいずれも、いずれにも事前に告知しないで行うものでございまして、継続的、密行的に、憲法の保障する通信の秘密を制約する処分でございます。

こうした通信傍受の性質を踏まえまして、通信傍受法におきましては、裁判所が傍受等の処分を取り消す場合において、当該傍受に係る通信が傍受すべき通信等に当たらない場合には、検察官等に対してその保管する傍受記録の消去を命じることとしているものと考えられます。

これに対して、電磁的記録提供命令は、通信の秘密を制約するという側面はあるとしても、通信傍受と異なり、処分の一時点において既に存在している電磁的記録の提供を命ずるにとどまり、先ほど申し上げたような通信傍受の継続的、密行的に通信の秘密を制約するといった性質の処分ではないことから、電磁的記録提供命令と通信傍受とを単純に比較することはできないと考えており、その上で、現行法の下におきましては、捜査機関が証拠を押収した場合において、その押収処分がその後取り消されたとしても、当該証拠の複製等を廃棄、消去することとはされておらず、直ちに裁判において証拠として利用することもできなくなるともされておらず、最高裁判例によりましては、令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが将来における違法な捜査の抑制の見地から相当でないと認められる場合に初めて証拠能力が否定されるという取扱いが確立しているところでございまして、こういったことからしますと、御指摘のような消去の仕組みを設けないことは、我が国の刑事法の基本的な考え、御指摘のような消去の仕組みを設けることは、我が国における刑事法の基本的な考え方と整合しないものであるというふうに考えております。

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