所千晴早稲田大学理工学術院教授・創造理工学部長・研究科長

2026年5月13日・第221回国会 参議院 資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会 第4号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 5 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 138 発言)

それでは、早稲田大学の所でございます。お手元の資料に沿って、二十分お話をさせていただきます。

私は、サーキュラーエコノミーのための分離技術を専門にしておりますので、その観点から、本日、サーキュラーエコノミーを中核とした資源循環戦略の方向性について述べさせていただきます。(資料映写)

最初のスライドでございますけれども、今、山地さんからもお話がありましたとおり、我が国では二〇二〇年にカーボンニュートラル宣言が出まして、ここでカーボンニュートラルに向けて大きく産官学で連携して動き始めたわけなんですけれども、特に物づくり企業にとって、このCO2を下げていくということに対しては、それだけではなくて、より物づくり企業とも相補的なサーキュラーエコノミーに対する一つの期待が非常に高まっているというふうに思います。

さらに、近年では、ここにネイチャーポジティブという考え方も出てきまして、これに対して、この三つで、この三位一体の総合的なアプローチで持続可能な社会を実現していこうという日本の今方向性が強いわけなんですけれども、その中でも、やはりサーキュラーエコノミーというのはカーボンニュートラルとネイチャーポジティブをも包含し得る大きな期待とコンセプトであるというふうに考えられます。

右肩、右に述べましたのは、ある企業活動におけるマテリアリティーのマトリックスの一例でございますけれども、企業活動におけるマテリアリティーは二十三項目あるんですけれども、よく使われるものが二十三項目あるんですけれども、そのうちでもサーキュラーエコノミーに直接的、間接的に関係するものがこれだけございまして、特に環境対応というのももちろん、緑のところでございますけれども、企業活動にとっては大事ですが、右上のサプライチェーンの強靱化であるとかエネルギーの管理、そしてリスク管理といったようなところは、まさに企業活動の安定化に直結するところで、ここのところにもサーキュラーエコノミーというのは大きく関与すべき項目であるということで、大きく関心を集めているものかというふうに思います。

こちらが二〇一五年にEUの方から循環経済の政策パッケージが出てきたときに使われておりましたエレン・マッカーサー財団が書いたサーキュラーエコノミーの概念図です。両輪に、チョウチョウの羽のように見えるのでバタフライマップというような言い方もされますけれども、この図が示すところは、環境制約とか資源制約、それから安全保障といったいろいろな考え方がある中でも、我々のウエルビーイング、そして成長、地方創生など、成長を経済的にも促していく、そして多重の多様な資源循環ループをつくって、その資源循環ループに経済的な価値を持たせるというような考え方に基づいています。

これは非常に期待が高くて、日本の物づくり企業とも相補的であるというふうに考えられるんですけれども、一方で、まだ足下、日本では思うようにこのサーキュラーエコノミーの方向に進んでいかないという現状がありまして、その課題は大きく分けてここに書きました四つに集約されるかというふうに思っています。

まず、日本は二〇〇〇年当初、やはり島国であり最終処分場が逼迫しているということで、リサイクル法が次々と制定されまして、非常にしっかりとしたリサイクル法があり、リサイクルの仕組みがあります。逆に、このことがサーキュラーエコノミーへの移行というのが少し遅れた原因にもなっているというふうに考えます。

というのも、日本の場合は、ここに示しましたように、リニアエコノミーと呼ばれる静脈産業がしっかりとあり、この静脈産業がユーザーに向けてしっかりとしたもの、機能の高いものを安く便利に作るというところがしっかりとしていますけれども、それが、製品がユーザーに渡りますとそこで分断されてしまいまして、その後、消費者がリサイクルをするのか、循環をするのか、どのように捨てるのかということを決めるという、まさにこの動脈と呼ばれる物づくりと再生の部分を担う静脈とか分断されている、サプライチェーン上分断されているというところに課題があります。それぞれしっかりとした仕組みがあるからこそということも言えるかと思います。ただ、これからサーキュラーエコノミーに移行していくためには、ここを分断させず、動静脈がしっかりと連携していくということが重要になっていきます。

それから二つ目は、リサイクルというのはこのループの中で一番外側のループなんですけれども、この外側のループは、もはやサーキュラーエコノミーのインフラとも呼べる非常に大事なところで、物は必ず最後一番外側のループでリサイクルあるいは適正処理をしなければいけないので、これは非常に大事なんですけれども、一方で、このサーキュラーエコノミーの中では、しっかりとつくって一番外側で回すというループは、回収、分離に一番エネルギーとコストが掛かるところでもあります。なので、インフラというような言い方もさせていただいたんですけれども、これをもっと省エネルギーに、もっとコストを掛けずに経済的な価値を回すためには、少しでも内側の資源循環ループをつくっていく必要があります。この内側のループをつくっていくということは、まさに一部動脈のプロセスと再生のプロセスが融合していくということになりますので、ここでもまた動静脈の強い連携が必要になってきます。

それから三番目ですけれども、こういった多重のループをつくっていくに当たっては、一つの企業、一つの個社でこのサーキュラーエコノミーが完結する場合は、比較的日本の場合はそういったビジネスも出てきているんですけれども、サプライチェーン全体にわたって多様なステークホルダーをこの循環というループでしっかりとつないで、多様な目的の中でこのサーキュラーエコノミーをみんなで達成していくためには指標が必要なんですけれども、CO2の例えば一・五度であるとか、どれぐらい減少させるとか、そういった分かりやすい指標に比べますと、サーキュラーエコノミーというのは、これだけ多様な目的と多様なステークホルダーがいますので、一つに絞るような分かりやすい指標がないというところが、またこれを皆さんで多重のループをつくっていくところの一つの課題になっていると思います。

それから最後に、こういったサーキュラーエコノミーを達成していくためには産官学連携でいろんな仕組みをつくっていく必要がありますけれども、現状、日本の場合は、産官学協調型というやり方で今サーキュラーエコノミーを推進しているというふうに言われておりまして、言い方を変えると、強力なリーダーが今のところ不在している。ですので、国内の二次資源市場というのが経済だけに任せていますとなかなかしっかりと確立していかないので、これがまたサーキュラーエコノミーに大きく日本が一歩を踏み込めていない現状になっているというふうに考えられます。

ただ、サーキュラーエコノミーをしっかりと達成しますとカーボンニュートラルとも相補的であるというレポートも出ていまして、これが自動車の資源循環を例に取ったレポートなんですけれども、自動車に対して物質効率性戦略、つまりサーキュラーエコノミーのような資源循環戦略ですけれども、これがない場合とある場合で、ある場合の方がGHGをG7でも、中国、インドでもこれだけ削減できるであろうというようなレポートが出ていまして、その内訳を右側で見ますと、まさにカーシェアリング、ライドシェアリングといった、先ほどのサーキュラーエコノミーでは最も内側に相当するようなシェアリングエコノミー、ここの部分のGHG削減の効果が一番大きい。

ただ、そこだけではありませんで、例えば赤いところの小型化、それからオレンジのところの物質代替、それから緑のところの使用後の回収率向上や製品の歩留り向上、あるいは長寿命化、再利用といったところも一緒にこういうふうにやっていきますと、全体でGHG削減とそれからサーキュラーエコノミーの両立ができるというようなことがレポートに出ていますので、こういったところが期待されるというふうに思います。

いい指標がないというふうに申し上げたんですけれども、概念的にはサーキュラーエコノミーというのは資源効率を上げるということが一つの目標になります。

資源効率というのは、まず、私たちのウエルビーイング向上のための機能を向上させまして、それに必要な資源やエネルギーを減らすという、こういった分子と分母から成る効率という概念になります。これを見ますと、実は今までの日本の物づくりというのは、既に集約化であるとか多機能化、高機能化、で、これを小型化してあるいは省エネで行う。さらに、日本は、高純度な素材が資源効率を向上し、長寿命化をしていますので、これも効率の数式の中に入れていきますと、これまでも日本の物づくりはサーキュラーエコノミー、すなわち資源効率の向上と言える非常に良い物づくりをしてきたということも言えると思います。

ただ、これをもう一歩サーキュラーエコノミーに踏み込んでいくのに新たなゲームチェンジとして今出てきているのが、赤字で書きましたシェアリングエコノミーに代表されるような稼働率の向上、もう一つは再生材利用です。これが今、足下、世界的に新しいゲームチェンジとしてサーキュラーエコノミーに入ってきている新たな概念です。

これも、今までの日本の物づくりの強みも生かしながらこの赤字の部分も達成していくというふうになると、ここに新たな対応一と書きましたけれども、まず再生材も高精度、高純度なものを日本も得ていく必要がある。これを、単なるリサイクルではなくて、新たに再生材という資源を日本で作るというような感覚で新たなリソーシングというシステムと技術の構築が必要になるだろうというふうに考えています。

もう一つは、対応二として、稼働率を高めるシェアリングエコノミーのような新たな新製品、あるいは新ビジネスが必要になってきます。

この再生材の需要を創成するというのはEUが戦略的に規制化をしていまして、例えばEUのバッテリー規制では、このように新たなバッテリーには再生材のコバルトやリチウムやニッケルを使用すべしというような規制をEUは発表していますし、あるいは、ELV、自動車では新たな自動車に再生プラスチックを二五%再生材で利用すべきというような規制案も出てきています。

こういったことをEUが戦略的に今規制化していることを考えますと、この良質な再生材というのも、今、足下、レアアースとかレアメタルと同じように、これから重要資源の一つの新たなカテゴリーとなりつつあるということが言えます。ですので、日本は良質な再生材を資源安全保障の観点からも戦略的に確保していくという考え方がこれからは重要になってくるかもしれないと、そういう状況にあるかというふうに思います。

これを得ていくための資源のプロセスというのを改めて見てみますと、上側に書きましたのが金属の天然資源の資源になっていくプロセスでありまして、それと同じように、再生材を得ていくプロセスを下側に書いています。右側が使用のプロセスでして、使用に近づけば近づくほどこのプロセスは似通っていくんですけれども、遠ざかれば遠ざかるほど、大分、同じものを得るにも天然資源と再生材では随分変わってくるということが分かります。

ここにも四つの課題を書かせていただきましたけれども、まず課題の一つ目としまして、この下側の再生材を得ていくところのプロセスとしましては、やはり高効率に回収していくということが必要になります。普通に考えれば、回収というのは輸送にエネルギーが掛かりますけれども、これをいかに低コストで省エネルギー化していくかということになりますと、デジタル化、情報連携、それから大規模化、動静脈が連携していくこと、あるいは、今経済の減速あるいは他国のいろいろな政策によってこの再生材の候補になり得る廃棄物というのは海外に流出している傾向にありますけれども、こういったものをどのように日本に確保して、二次資源市場を日本に確立していくのかと、こういったことがこれから必要になってくると思います。

それから、これを確保した後に、課題の二番目としては、これをまた高効率に、コストを掛けずに、エネルギーを掛けずに解体、分解をしていくと。ここも、今現状のリサイクルというのは経済的価値の高いメタルを中心にできてきたシステムですので、これを樹脂やガラス、あるいはレアメタル、こういったものも含めて再生していくためには、より易解体設計、これを製品側にも求めていく必要がありますし、また選択的なエネルギーの付与方法の新しい技術であるとか、粒子、結晶レベルでの、溶かさずに済むような分離技術、こういった新しい分離技術が必要になってくると思います。

さらに、それでもなお再生材というのは高純度に得る必要がありますので、最後は化学の力で溶かして分離する必要があるんですけれども、ここにはエネルギーが掛かります。このエネルギーをどうやって省エネルギーにしていくかということが大事なんですけれども、これは、新たな不純物除去技術、あるいは選択性を持った除去技術、あるいは、物を分離すると必ず良いものと悪いものに分かれるんですけれども、良いものばかりを見ているのではなくて、悪いもの、悪いものでもないですけど、使いこなしというふうに我々は呼んでいますけれども、経済的価値が一歩劣るものも副産物として余すところなくバランスよく使いこなしていくと、こういったことが日本は求められていきます。

最後に、これを達成するのは決して再生側だけの技術開発や仕組みづくりではなくて、先ほどから申し上げているように、動静脈連携というのが非常に求められていきます。そのためには、製品側も変わっていく必要があります。製品側は、まず稼働率を向上するための新ビジネスをするための、そういったものに資する製品という考え方を新たに入れていく必要があって、そこには、易解体設計であるとか、リユースやリマニュファクチャリングなどをよりビジネス化していく必要があります。

今申し上げた部分について、より分離技術の部分を取り出して書いたのがこのスライドでございますけれども、結局、このようなことをしていくためには、精緻に分離をして、廃棄物を資源としてもう一度見直していくということが重要になってきまして、製品側はそれが達成できるように、今までは消費者の方を向いてより便利で高機能なものを、省エネルギーに良いものを作るというところに焦点を当ててきたわけですけれども、その後のループまでを見据えて易解体設計をしていくということが重要になってきますし、また、中間の部分では、これまではメタルのような希金属ですね、こういったものを中心に、経済的な価値が見合うものだけをリサイクルしてきたというところを、より機能、樹脂のような機能を循環させるためには、溶かすのではなくて、樹脂は樹脂のまま、素材は素材のまま循環させていくことが必要になりまして、そうすると、よりこの粒子、固体のまま分離をして、それを循環させていくというような技術やシステムが必要になってきます。

ただ、それでも純度を高めたい場合には、最後は化学の力、バケガクの力が必要になりますけれども、ここでも、これまでは大規模に均一化して全体を溶かして、そして高純度な素材を得ていくというプロセスを行ってきたんですけれども、それだけではなくて、溶かしたい部分を溶かす、再生したい部分だけを再生するといったような選択性の高い技術開発、こういったものが必要になってくるというふうに考えています。

現状、この外側の化学のプロセスについてはある程度技術者、研究者もいるんですけれども、より内側になってきますと、我々アカデミアも含めて人材が不足しているというような状況にあるかと思います。

より具体的な技術開発といいますと、こういったキーワードが並んでくるかというふうに思います。現状は、人手に頼っていたり、破砕、粉砕に頼っているような技術に対して、ここに書きましたような、今までは生産のみに使われてきたようなマイクロウエーブやIH、電気パルス、レーザーといった、こういった外部刺激を再生の技術開発としても見直しまして、これを再生の技術として使っていくということが必要になってくると思います。

現に、ここに一例書きましたけれども、ブルーリバースという協議体では、これまで自動車を破砕、粉砕し、金属をリサイクルしてきたというようなプロセスを見直して、最初から精緻解体をする。樹脂は樹脂、ガラスはガラス、素材は素材という形でレーザーで切り取って精緻解体をし、ここから再生材を新たに得ていくというような技術開発も出てきておりまして、こういった流れがこれからより活発化していくんじゃないかというふうに思います。

少し具体的な例を本日持ってまいりました。先ほどもこの再生可能エネルギーの活用とサーキュラーエコノミーのバランスが非常に大事というお話がありましたけれども、その中で象徴的なものになるのがこのリチウムイオン電池です。このリチウムイオン電池は、カーボンニュートラルからも、それからサーキュラーエコノミーからも非常に象徴的なマテリアルになっていまして、非常にサーキュラーエコノミーの仕組みづくりも重要になってきています。

ここで見ますと、自動車には再生材供給が重要になっていますし、この循環を効率化するにはデジタル化による効率化が必要ですし、サーキュラーエコノミーを達成するためにはリユース、リファービッシュといった内部の資源循環のループの創成が必要ですし、また再生材は使いこなしが必要という、まさに今申し上げた全ての課題がこれで具体的に見えるような一つの象徴的な物質になっています。

このリチウムイオン電池でも、このように内側のループをつくると、カーボンニュートラルとそれからサーキュラーエコノミーが相補的であるというような試算結果が出ておりまして、もちろん青色で書きました外側のリサイクルもインフラとして非常に重要ですけれども、少しでも内側のループ、これは具体的には、電池の酸化物を作るループを再生と循環を融合させて、そこでエネルギーを稼いで、カーボンニュートラルと資源循環を相補的にしている例なんですけれども、こういったことがこれから必要になってくるというふうに思っています。

今、電池では、最先端の電池を作るというようなこともこのカーボンニュートラルには大事ということで期待されている一方で、それだけではなくて、この再生も含めた、上流から下流を含めたいろんな人材が必要であるということで、人材育成の重要性というのも認識され、産官学連携でこういったBATONと呼ばれる組織も発足しています。こういった取組が一つ最近の例ということで御紹介できるかと思います。

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