熊谷亮丸株式会社大和総研代表取締役副社長兼副理事長

2026年3月24日・第221回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 106 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 267 発言)

大和総研の熊谷でございます。

本日はお招きいただきまして、心より光栄に存じます。

御審議の御参考にさせていただきたく、令和八年度の予算案につきまして意見を申し述べます。

私の資料で右下のページで申し上げてまいりますが、一ページの部分で、本日はこの二つのポイントについて、日本経済、海外経済の展望、そして日本経済が抱える課題についてお話をさせていただきます。

まず、一つ目の論点でございますけれども、三ページ目でございます。

一番上のところに書いてございますが、日本経済は今後一%程度の成長が展望できるということでございまして、潜在成長率と言われる実力が〇・五%程度でございますので、これを若干上回るぐらいの緩やかな経済成長が予想されます。

四ページ目でございます。

左のグラフでお示しをしているのは、IMFの分析を参考にして私ども大和総研が作成をしたデフレリスク指数というものでございまして、値が大きくなるほどデフレリスクが大きくなるということでございますが、足下は〇・三一と。そして、右半分のところで諸外国の状況、これは絶対水準自体は単純比較はできませんが、諸外国などと比べても総じて見ればデフレのリスクは決して大きなものではなくて、むしろ今、日本経済はインフレ的な方向へと動いてきているということであります。

五ページ目でございます。

日本政府が目指してきた賃上げと設備投資の好循環ということでございますが、これは四つのステップがございます。

まず、右端のステップ一というところで、構造的な人手不足の中で賃上げが三十数年ぶりに行われてきました。そうしますと、ページの一番上のステップ二のところでございますけれども、この資本と労働を比較したときに、相対的に資本が割安になり労働が割高になりますので、この相対価格の変化を通じて設備投資が増加をして、百兆円を大きく超えてきたということがあります。

そして、左半分のところに行って、上から四行目辺りで、後ほどお話しするように、最適な設備のストックと比べると、現状日本の設備は二百九十兆円程度不足をしている。そして、ステップ三というところで、これから資本ストックが増加をして、そして人への投資を行うことによって、ページの一番下の部分で、労働生産性が上昇して、そうすると、ぐるりと回ってステップ四というところで実質賃金が上昇するという、大局的には今、日本経済はこうした方向に動く兆しが出ているということであります。

六ページ目が日本経済を下支えする要因でございますけれども、賃上げによる家計の所得環境の改善、それから政府の経済対策、そして、日銀は利上げをしていますが、実質金利はまだ大幅なマイナスでございますので、緩和的な金融環境、そして家計の貯蓄もコロナ禍前よりも増えているということで、これらが日本経済を支えるという見方です。

七ページ目のところにリスク要因がございますが、やはり何といっても中東情勢がどうなるか。そして、トランプ関税によるアメリカ経済悪化のリスク、そして日中関係の悪化、円相場の下落、そして国内金利の上昇等のリスク要因には引き続き警戒が必要である。総じて見れば、海外経済ですとかマーケットのところにリスクがあるという認識であります。

八ページ目が、原油高、中東の影響でございますけれども、左半分の部分がホルムズ海峡周辺国からの原油とかLNG輸入が一〇%減ったときの経済に与える影響でございますけれども、日本は〇・八%ぐらい下押しになります。

そして注目されるのは、実は中国ですとか韓国に対する影響も大きくて、例えば中国マイナス〇・九とありますが、その下の括弧の〇・一四というのは、ここからくる日本のGDPに対する悪影響ということでございまして、右半分の部分で、メインのシナリオ、ベースラインで、原油が七十三ドルぐらいであれば一%成長、日本経済の見通しでございますけれども、これがもし百二十ドルになると〇・五ぐらいの下押しがあって、そしてテールリスクということで海外から原油が入らなくなるようなケース、そして百五十ドルまで上がるということであれば日本はマイナス一%の成長になってしまうということであります。

九ページ目でございますが、為替に関して言うと、恐らくは百三十円台ぐらいのところがおおむね為替は適温の水準ではないかということでございまして、ここでは損益分岐点比率を、これを日本全体で見ておるわけでございますが、恐らくは百三十円台ぐらいのところがおおむね適温の状況ですので、この後、更に円安が進むようであれば、輸入物価が上がり、実質賃金が圧迫されるような、こういうリスクがあります。

また、十ページの部分で、トランプの関税政策による日本経済への悪影響、これも無視できないものがあります。

また、十一ページの一番上のところに書いてありますが、中国政府による日本への渡航自粛等によって日本のGDPは〇・一から〇・四%程度下押しされるリスクがあります。

十二ページ、十三ページは、中国経済、実態非常に厳しいということでございまして、十二ページでお示しをしているのは企業と家計の借金の残高のGDP比で、私はこのグラフをバブルのオールスターと呼んでおるわけでございますが、過去の名立たるバブルと並べたとしても、中国はもう遜色がないぐらいのところまで今借金漬けの状況であるということ。

また、十三ページで、ブルーの線が李克強指数といって、これは鉄道の貨物輸送量等々の、お金が絡んでいて数字を改ざんすることができないもので、この李克強指数というもので経済実態を捉えますと、ゼロ%成長でもおかしくないぐらい今の中国経済は厳しくなっていると、こういう認識であります。

十四ページ以降で、二つ目のテーマでございますが、十五ページは諸外国と比較した実質賃金ということですが、日本とあとイタリアが非常に低迷をしている。実は、これ最近の話ではなくて、九〇年代の前半から日本の実質賃金はずっと継続的に低迷しているという問題があります。

十六ページでお示しをした赤で囲んだ部分でございますけれども、過去二十年間の日本とアメリカの一人当たり実質賃金を比較をすると、アメリカの方が一・四%ポイントずつ毎年毎年高いということがございます。

これを①から⑤の五つの要因に定量的に分解したものでございますけれども、この中では、一つは時間当たりの労働生産性、それからもう一つは労働時間という、この二つがおおむね半分ずつぐらい寄与しているわけでございますから、そういう意味ではこういう抜本的なところに対して手を打っていかないと、この構造問題に手を着けないとなかなか日本の一人当たりの実質賃金は継続的に上がることにはなりにくいということでございます。

十七ページ以降は、昨年の七月に、経団連が毎年軽井沢で夏季フォーラムというものを開催しておりますけれども、そこで二〇四〇年に向けて日本が何をやるべきかというお話を私が講演をさせていただきました。

そのエッセンスをお持ちいたしましたけれども、経済成長は、これはもう釈迦に説法でございますが、労働と資本とTFP、これは技術力等でございますけれども、この三つをやはりバランスよく上げていかないといけない。

まず、一つ目の労働に関しては、十八ページでございますが、一番下の部分で、そこに書いてあるような様々な施策が全てうまくいったとすれば、一四・六%、八十六兆円ぐらい日本の潜在的なGDPを上げる余地がございます。

十九ページは、二つ目のポイントである資本でございます。一番上のところにあるように、量、質、配分の三つの面で問題がある。まず、左下が量でございますけれども、この量の不足によって失われているGDPがおおむね一六%程度、そして右上のところで、その質が悪い、老朽化することによって失われているGDPが一〇%程度、そして生産性が低い分野に張り付いていることによって失われている分が一八%程度ということです。

二十ページは省力化投資、ここはやはり恩典を与えてどんどん進める必要があるわけで、今、年間五兆円やっているものを、これをやはり二十六兆から五十四兆ぐらいやるようにならないとなかなか人手不足を補うことは難しいと。

二十一ページ、三つ目のTFPでございますけれども、日本が諸外国と比べて劣っているのは、人的資本投資、新規事業の創出、労働者の多様性等々でございまして、これらのところに対してしっかりとピンポイントで対策を打つことが肝要である。

二十二ページ、最終的に左のグラフで三つのシナリオで、今のままだと緑の線で、これから四〇年にかけて毎年〇・三%しか伸びないわけですが、もし衰退するのであれば毎年〇・五%、日本が目指すべきはプラス一・五%、このときはまさに二〇四〇年に名目GDPが一千兆円に到達すると、これを目指すことが必要であるということです。

二十三ページ、戦略の十七分野への投資でございますけれども、大きな方向性は賛成するところでございますが、左上のところに三つ書いたようなこういった幾つかの問題もあるわけでございますので、しっかりとエビデンスに基づいためり張りのある投資を行うことが肝要である。

二十四ページ、危機管理投資でございますが、やはり日本は中国とか中東に対する依存度が高くて、とりわけ中東に対する石油、石炭、中国に対する情報通信、電子デバイス等がございますので、これらのところが経済の急所になる可能性がございます。

二十五ページでございますが、これらの問題が起きたとき、どれぐらい潜在的な日本のGDPが落ちるのか。左上のマイナス三・四というのは、中国からレアアース、レアメタルが完全に止まったとすると、在庫等全く考えなければ日本のGDPは三・四%程度落ちます。右下の一五・三というのは、中国からの輸入が途絶をしたとすると、そのときはGDPに対する影響が一五・三%程度になります。

二十六ページ、シミュレーションの前提として、ミドルリスクとして中国からのレアアース等の輸入の停止、そしてテールリスク、蓋然性は低いが大変なリスクとして、中国からの全面的な輸入の停止として、対策がもしなかったとすると、ミドルリスクで日本のGDPは三・四%落ち、テールリスクで一五・三%落ちます。

右半分のところは、この三・四とか一五・三落ちるところを、仮にその影響を五〇%ということであれば、半分に抑制するということだとどうなるかということでございますけれども、これを使ったシミュレーションが二十七ページでございます。

二十七ページの左のグラフのところで、緑の線は、この今申し上げたテールリスク、ミドルリスクの双方に対して全く対策をしないときのGDPの落ち方、そして赤い点線が、これらに対して影響を五〇%、半分まで抑えたときでございますけれども、申し上げたいのは右側のグラフで、オレンジ色の線は完全にこのミドルリスク、テールリスクを抑制したときで、五〇%抑制したとすればGDPは〇・四七程度落ちを防げるわけですが、仮にミドルリスクのみに絞って対策を打ったとしても〇・三六程度のところまで防げるわけでございますから、申し上げたいことは、全てのリスクに対応するのではなくて、特にやっぱり大きなリスクに重点的に対応することが肝要である。

二十八ページは、外国人労働者の受入れ、賛否ございますが、右上のところで、潜在成長率を上げることが期待できます。

また、二十九ページで、ポピュリズムが台頭することによって十五年でGDPが一〇%落ちるというような試算もございますので、こういったことも防がなくてはなりません。

最後に、三十ページで、今、社会保障の有識者会議、国民会議が立ち上がって、当社の研究員もそのメンバーに光栄なことに入れていただきましたけれども、これから大きな方向性としては、右のグラフで、これからまず何を目的にするかということをしっかり議論した上で、前提としては今の国民の負担状況を定量的に抑えた上で、そして、下半分の第一ステップとして、まず軽い形で、ライトな形で始めてみる、そしてその後でより精緻な形で低所得者や子育ての負担をこれを軽くするというようなものを将来的につくり込んでいくということが肝要であると考えます。

私からは以上でございます。

御清聴ありがとうございました。

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