小泉悠東京大学先端科学技術研究センター准教授

2025年2月19日・第217回国会 参議院 外交・安全保障に関する調査会 第2号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 77 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 90 発言)

残念ながら、ないと思います。

北方領土、僕は二回行っているんですよね。二〇一三年に国後、択捉行ったときには、ここは本当に二十一世紀の地球なのかと思うぐらいひどい環境で暮らしているわけですよ。二〇一八年に同じ国後、択捉行ったら、見違えるようにきれいになっている。少なくとも、我々が見えるところはとてつもなくきれいになっているし、観光産業らしきものもできているし、とてもじゃないですけど、ロシア化なんて言えないです、もうロシアになっちゃっているということなんですよね。更に言うと、私が二〇一三年に見た、これが本当に二十一世紀の地球なのかと思うのでさえ多少良くなったわけなんです。九〇年代の国後、択捉、色丹というのは本当にひどかったわけですよね。でも、それでもロシアは手放さなかった。

それから、結局、あそこをロシアが軍事占領し続けている軍事的理由というのは、その内側のオホーツク海に原子力潜水艦がパトロールしているからなわけですよね。でも、その基地はカムチャツカにあるんですけど、あそこだって九〇年代にはもう到底経済的に維持し切れなくなって、もう閉鎖しちゃおうかという話もあったけど、プーチンは、いや、閉鎖しないと言ってあれを残したわけですね。

あの九〇年代とか二〇〇〇年代前半の本当に厳しい時期にもロシアはやはりあれを放棄しなかったし、なおかつ、その間の日本側の働きかけというのは、じゃ、もちろん政経は別々にして、先に経済援助もしますであるとか、潜在的に日本に主権があるとさえ言ってくれればいいと、柔軟の、時期、様態に関しては柔軟に対応するという、ほぼこれ以上妥協ができないところぐらいまで妥協したわけですよね。でも、やっぱりロシアはのまないわけです。

今、少々ウクライナでロシアが苦しんでいるぐらいで立場が弱くなってあの島を返す話に応じてくるとは思えませんし、他方で、安倍政権のときにロシア側は、じゃ、北方領土を返してほしいんであれば在日米軍を撤退させてくれという、逆に島を人質に取って我々の主権条項に口突っ込んでくるようなことを言ってきたわけですよね。そうであってはやっぱりおかしいと思うんですよ。ソ連による主権侵害問題の落とし前を付けるための北方領土問題なのであって、何かいつの間にか島を人質に取られて、じゃ、ああせいこうせいとロシアに言われるんではもう全く本末転倒であろう。だったら、解決しないよりは、もうこれは外務省ロシア課の伝統的な態度ですけど、百年でも正論を言い続けるという方が私は何ぼか国益になると思っています。

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