ヤルタ二・〇という言葉は多分にはやり言葉ではありますけれども、要するに、冷戦後にロシアが言ってきた多極世界という話がいよいよ実現しつつあるという手応えは持っていると思うんですね。ただ、多極世界というのは、要するに、アメリカ中心世界を解体して何か別の世界をつくるということなんですよ。それ自体はとてもいい話だと思うんですけど、その多極世界というのは、無極世界とはロシアは言わないんですよね。幾つかの極、グレートパワー、ロシア語で言えばデルジャーヴァがいて、それがそれぞれの地域を取り仕切る、その地域を取り仕切っている極同士はけんかしないという世界なので、どちらかというとこれは勢力圏分割構想みたいなものに近かったわけです。少なくともプーチン政権下ではそういう話にどんどん変わっていってしまったと。
今、そのヤルタ二・〇というのは、だから、結局、その勢力圏分割をするメンバーを変えて同じようなことをしましょうと、さっき広瀬先生がおっしゃった第二次世界大戦後の勢力圏分割をもう一回やりましょうというふうにロシア側からは見えているんだろうと思います。そのときに、当然のことながら、旧ソ連地域はロシアのものですよねと。
あと、もう一個忘れてはいけないのは、二〇二一年の十二月にロシアは具体的な提案をNATO本部とアメリカ政府両方に対して送っていますよね。特に、あの中のアメリカ向け条約案の中では非常に具体的なことを言っていて、旧ソ連にはNATOを拡大しないと約束しろと言っているし、それから東ヨーロッパのNATO加盟国からは米軍を撤退させろと、合同軍事演習もするなと。つまり、東ヨーロッパは緩衝地帯にしろと、NATOは西ヨーロッパ以降でやりなさいという話なんですよね。そういうような形のヤルタ二・〇というのをロシアは多分構想しているだろうと思います。
ただ、そこに中国が、当然もうアジアは中国のものでいいやってロシアは思っているわけですけど、今のウクライナ戦争そのものの具体的な停戦プロセスに中国が入ってきそうかというと、余りロシア語圏から見た情報の中ではそういう期待論というのはない気がしますね。
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杉尾秀哉(立憲)
広瀬参考人に同じ質問伺いますが、加えて、広瀬参考人には、先ほど、今のお話もそうだったんですけれども、小泉参考人がおっしゃっていた、事実上トランプがロシアの要求を相当のむことで戦争を終わらせようとしているんじゃないかと、これについての見解も含めてお答えいただけますでしょうか。
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22広広瀬佳一防衛大学校人文社会科学群教授
分かりました。
もちろん現在進行形ですので、あくまで私見として申し上げますけれども、こういう大きな戦争が起きたときに、やはりこれは今私はパラダイムシフトになっていると思うんですね。もう冷戦後の多国間協調というのが終わりつつあって、やっぱり大国間のパワーポリティクスというのが物を言う時代になっていると。これってやっぱり第二次世界大戦の後にちょっと似ているわけですよ。第二次世界大戦のときだって、結局、小国の問題、東ヨーロッパの問題、いろいろな問題がありましたけど、決めたのはスターリンとルーズベルトなわけですね。ですから、そういうそのパターンがもう一回繰り返…
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杉尾秀哉(立憲)
今、広瀬参考人がおっしゃったように、こういう交渉というのはそのゲームプレーヤーが多ければ多いほどまとまらないので、アメリカ、それからロシア、プーチンにしてみれば、双方やっぱりなるべく少ないプレーヤーで決めた方が話がまとまりやすいということだと思うんですが、そこで、今、広瀬参考人が触れられました第二次大戦という話で、最近ロシアなんかでヤルタ二・〇という言葉が言われているというふうに聞いています。あのときはイギリスのチャーチル首相がいたわけですね。そこにアメリカのルーズベルトとそれからロシアのスターリンと、ソ連のスターリンということだったですけれども、その三…
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- (上の発言)
24小小泉悠東京大学先端科学技術研究センター准教授
ヤルタ二・〇という言葉は多分にはやり言葉ではありますけれども、要するに、冷戦後にロシアが言ってきた多極世界という話がいよいよ実現しつつあるという手応えは持っていると思うんですね。ただ、多極世界というのは、要するに、アメリカ中心世界を解体して何か別の世界をつくるということなんですよ。それ自体はとてもいい話だと思うんですけど、その多極世界というのは、無極世界とはロシアは言わないんですよね。幾つかの極、グレートパワー、ロシア語で言えばデルジャーヴァがいて、それがそれぞれの地域を取り仕切る、その地域を取り仕切っている極同士はけんかしないという世界なので、どちらかというとこれは勢力圏分割構想みたいなものに近かったわけです。少なくともプーチン政権下ではそういう話にどんどん変わっていってしまったと。
今、そのヤルタ二・〇というのは、だから、結局、その勢力圏分割をするメンバーを変えて同じようなことをしましょうと、さっき広瀬先生がおっしゃった第二次世界大戦後の勢力圏分割をもう一回やりましょうというふうにロシア側からは見えているんだろうと思います。そのときに、当然のことながら、旧ソ連地域はロシアのものですよねと。
あと、もう一個忘れてはいけないのは、二〇二一年の十二月にロシアは具体的な提案をNATO本部とアメリカ政府両方に対して送っていますよね。特に、あの中のアメリカ向け条約案の中では非常に具体的なことを言っていて、旧ソ連にはNATOを拡大しないと約束しろと言っているし、それから東ヨーロッパのNATO加盟国からは米軍を撤退させろと、合同軍事演習もするなと。つまり、東ヨーロッパは緩衝地帯にしろと、NATOは西ヨーロッパ以降でやりなさいという話なんですよね。そういうような形のヤルタ二・〇というのをロシアは多分構想しているだろうと思います。
ただ、そこに中国が、当然もうアジアは中国のものでいいやってロシアは思っているわけですけど、今のウクライナ戦争そのものの具体的な停戦プロセスに中国が入ってきそうかというと、余りロシア語圏から見た情報の中ではそういう期待論というのはない気がしますね。
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杉尾秀哉(立憲)
最後に、酒井参考人に伺いたいんですが、これは仮の話の場合ですけれども、ロシアに有利な形で停戦、和平が実現した場合、先ほどちらっと先生触れられておられましたけれども、日本がどういう立場を取るべきなのかと、ここでアメリカを支持した場合は国際法の発展に対する後ろ向きの姿勢を示すことになるんじゃないかと、こういうことをおっしゃいました。
それから、ICCの今回のそのアメリカの制裁に対する日本の、いわゆる共同声明に日本が加わらなかったという問題も含めて、今の日本のこうした姿勢について率直な参考人の御意見を聞かせていただければ有り難いんですけれども、こうあるべきで…
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26酒酒井啓亘早稲田大学法学学術院教授
ありがとうございます。
難しいんですけれども、私自身の個人的な考え方を言うと、国際法というのは国際社会の構成員の協力の下に作られてきたものであって、どこまでそれが現状に合っているかどうかということを考えながら発展させていかなければならないだろうというふうに思っています。
その限りで、日本が、行き過ぎた発展を国際法がしているということであれば、そこに、将来的にはその方向に持っていくべきだという姿勢は取りつつも、しかし現時点では、国際法は具体的な規則というのは外交に資するものではないという形で後ろ向きになるのも、これは国益の観点からは理解できるところでは…
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杉尾秀哉(立憲)
そういう戦略的な対応が必要だということで、了解いたしました。
ありがとうございました。私からは以上です。
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