成瀬剛東京大学大学院法学政治学研究科教授

2025年5月8日・第217回国会 参議院 法務委員会 第7号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 38 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 101 発言)

お答え申し上げます。

刑訴全体の趣旨に関わるというふうに申し上げた点について、敷衍して説明をさせていただきます。

まず、通常の有体物を差し押さえた場合というのを念頭に置いていただきたいんですけれども、例えば被疑者の自宅にあった日記帳を差し押さえたという場合には、多くの場合、警察官はその日記帳原本を触ると証拠を破壊してしまうリスクというものもありますので、それを直ちにコピーを取った上で、そのコピーの方を捜査で活用するというような形になっております。その日記帳の差押えが違法だという形で取り消された場合には、当然、日記帳は相手方に返すことになるわけですけれども、その日記帳のコピーを廃棄するのかと言われますと、それは、現行刑訴法上、廃棄すべきという規定は存在しません。

同じように、記録命令付差押えというものが現行法上ありますけれども、その際に電磁的記録媒体という形で提供された電子データがあるわけですが、その電子データについても、その物自体を捜査に活用するとまた破損するリスクがありますので、コピーを取った上で捜査に活用するというのが実情でございます。記録命令付差押えの場合、相手方の記録媒体である場合には、違法な処分であった場合には記録媒体は返しますけれども、そのコピーを取ったデータを廃棄するということにはなっていないわけです。

ですので、現行刑訴法におきましては、基本的な考え方としましては、違法な処分があったとしても、当該物は返還するとしても、その複写のものまで全て廃棄するという規律にはなっていないわけでございます。

先生が御指摘の電磁的記録提供命令の場合には、データが来るのであるから、データの処分が取り消された場合には、データを消去しろということになりますと、今申し上げた前提の部分、現行法上の規律との整合性が問題になってまいりますので、その部分も全て変えるのかということになりまして大掛かりな検討が必要になるというふうに意見を申し上げた次第でございます。

以上です。

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