今日は、こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は、十五年ほど前に、いわゆる郵便不正事件で逮捕されて勾留をされ、百六十四日拘置所で過ごし、一年三か月かけて無罪判決をいただきました。
逮捕された最初の取調べで私が検事から言われたのは、取調べの期間は二十日、二十日の取調べの結果、あなたを起訴するかどうか決めますが、あなたの場合は起訴されることになるでしょう、私の仕事は罪を否認しているあなたの供述を変えさせることですと言われました。そういう形で始まった取調べでした。
この事件を通じて、私自身は、密室の中でいかに不適正な取調べが行われているか、そこで作られる調書というのはいかに真実からかけ離れたものになるのか、それから、普通の市民がそういった取調べの場に置かれたときに本当に簡単に虚偽の自白や供述に追い込まれるのか、否認をすれば身体拘束が長期化をする、そのこと自体が虚偽の自白を迫る道具として使える、裁判官もそのことに無自覚だ、そして身体拘束がどれだけ被疑者、被告人の心身を痛めつけるかということを実感しました。
幸い、私の事件はそういった取調べの実情等々も明らかになり、その事件の反省を基に二〇一六年に改正刑訴法が成立して取調べの録音、録画が義務化をされました。残念ながら、録音、録画の対象事件はごく一部、裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件に限られましたし、また、身体拘束中の取調べのみが対象となっております。
それでも、私は、この法改正には非常に大きな効果があるのではないかと大変期待をしていたんですが、その後も、プレサンス事件ですとか、先ほどお話があった大川原化工機の事件ですとか、参議院の大規模買収事件や五輪談合事件などで不適正な取調べの実態というのが次々に明らかになって、大変憂慮をしています。
実際、検察にストーリーがあって、それに沿った供述を取調べで強制をする、とりわけ立場や性格の弱い人をまず責めて、そこで事実と異なる調書を作って全体の突破口にする、逮捕や勾留の長期化を示唆して脅す、罪が軽くなることを示唆して今度は供述を誘導する、人格否定、大声でどなる、机をたたく、そういったことをして精神的に追い詰めていく、心身の不調を訴える人をいつまでも保釈せず、本当に命を落とす人まで出たといったことが繰り返されています。本当に何も変わらないのかというふうに思わざるを得ません。
特に、いわゆる人質司法ですが、自白の強要はもちろんですけれども、早く出たいがためにほかの人を陥れる供述を強要する道具にもなっているということは、私の事件のときもそうでしたけれども、プレサンスや五輪談合でも同じことが行われていて、本当に早くこの状況を何とかしてほしい、これは裁判官の方にも申し上げたいと思います。
私がこういう経験をしたということもあって、事件の関係者、いろいろな事件の関係者にお目にかかることがよくあるんですが、皆さんが全く同じことを私に言われる。自分が事件に巻き込まれてみて初めて、この国の刑事司法というのはこんなことになっていたのか、それまで全然知らなかったということです。これは私が当時感じたことと全く同じです。こういうことが続いていくと、本当にこの国の刑事司法に対する信頼が失われていくのではないかというふうに思っています。
こういったことを踏まえて是非私がお願いをしたいのは、まずは、全ての取調べの録音、録画、全ての事件、そして在宅や参考人の取調べも録音、録画をしてほしいということです。これがないと、何があったかというのを確認をすることができないわけですから、証明をするすべがないわけですから、まず、録音、録画の義務化の範囲を拡大をしてほしいというふうに思います。
それから、録音、録画があってもひどい取調べが行われているということがだんだん明らかになってきています。これはなぜかといえば、表に出なければいい、ばれなければいいということがあるわけです。今の仕組みですと、例えば、調書を採用するかどうかというようなことが、調書の請求がなければ、ひどい取調べだったと訴えて、それを明らかにしていくすべがないわけですから、ひどい取調べを受けた、そういうことがあったといったときに、取調べの状況がきちんと検証してもらえる、見てもらえる、表に出してもらえるという仕組みを是非入れてほしいと思います。
また、皆様からもお話が出ていますが、人質司法をなくすための仕組みの強化を是非お願いをいたします。
刑訴法が改正をされたときに、録音、録画の仕組みは不十分なものではないかという議論は当時からありました。そのために、改正法を作ったときに附則の九条で三年後の見直しを決めております。このときに、附則では、取調べの録音、録画については、「被疑者の供述の任意性その他の事項についての的確な立証を担保するものであるとともに、取調べの適正な実施に資することを踏まえ、」、制度の在り方について検討を加えるというふうに言われております。
これを受けて、実は、二二年に法務大臣が、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を設置をしてくださいました。この協議会の設置から三年近くがたとうとしているのですが、残念ながらやっと一巡目の議論が終わったというところで、私も役人ですから余りこういう言い方はしたくはないんですが、本当に熱心にやっていただいているとは言い難いゆっくりとしたペースで進んでおりまして、しかも、一般有識者、市民の参加がなく、かつ、マスコミの傍聴もできないというような状況で、申し訳ないですけれども、法務省の消極的な姿勢を非常に憂慮をしているところでございます。
これだけ問題事案が次々と発生をしております。これ以上この問題が放置をされないように、是非立法府においてリーダーシップを取っていただきまして、法改正、運用の改善を早期に実現をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。(拍手)
5
西村智奈美(立憲)
ありがとうございました。
次に、藤井参考人にお願いいたします。
この発言のページ
6藤藤井敏明日本大学大学院法務研究科教授
藤井と申します。よろしくお願いいたします。
私は、令和三年六月に裁判官を定年退官いたしまして、翌年の四月から日本大学法科大学院で刑法と刑事訴訟法の講座を担当して三年になります。裁判官時代には司法研修所の教官というのも経験しておりまして、そのときの最も優秀な教え子の一人が篠田委員でございます。
それでは、本題に入ります。
本日は、元裁判官という立場から、冤罪が起こる原因、理由として考えられるものと、それを減らすための改善策について所見を申し上げます。
冤罪という言葉には、罪がないのに罰せられることに限定する使い方もありまして、この場合には誤判という…
この発言のページ
7
西村智奈美(立憲)
ありがとうございました。
次に、村木参考人にお願いいたします。
この発言のページ
- (上の発言)
8村村木厚子社会福祉法人全国社会福祉協議会会長
今日は、こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は、十五年ほど前に、いわゆる郵便不正事件で逮捕されて勾留をされ、百六十四日拘置所で過ごし、一年三か月かけて無罪判決をいただきました。
逮捕された最初の取調べで私が検事から言われたのは、取調べの期間は二十日、二十日の取調べの結果、あなたを起訴するかどうか決めますが、あなたの場合は起訴されることになるでしょう、私の仕事は罪を否認しているあなたの供述を変えさせることですと言われました。そういう形で始まった取調べでした。
この事件を通じて、私自身は、密室の中でいかに不適正な取調べが行われているか、そこで作られる調書というのはいかに真実からかけ離れたものになるのか、それから、普通の市民がそういった取調べの場に置かれたときに本当に簡単に虚偽の自白や供述に追い込まれるのか、否認をすれば身体拘束が長期化をする、そのこと自体が虚偽の自白を迫る道具として使える、裁判官もそのことに無自覚だ、そして身体拘束がどれだけ被疑者、被告人の心身を痛めつけるかということを実感しました。
幸い、私の事件はそういった取調べの実情等々も明らかになり、その事件の反省を基に二〇一六年に改正刑訴法が成立して取調べの録音、録画が義務化をされました。残念ながら、録音、録画の対象事件はごく一部、裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件に限られましたし、また、身体拘束中の取調べのみが対象となっております。
それでも、私は、この法改正には非常に大きな効果があるのではないかと大変期待をしていたんですが、その後も、プレサンス事件ですとか、先ほどお話があった大川原化工機の事件ですとか、参議院の大規模買収事件や五輪談合事件などで不適正な取調べの実態というのが次々に明らかになって、大変憂慮をしています。
実際、検察にストーリーがあって、それに沿った供述を取調べで強制をする、とりわけ立場や性格の弱い人をまず責めて、そこで事実と異なる調書を作って全体の突破口にする、逮捕や勾留の長期化を示唆して脅す、罪が軽くなることを示唆して今度は供述を誘導する、人格否定、大声でどなる、机をたたく、そういったことをして精神的に追い詰めていく、心身の不調を訴える人をいつまでも保釈せず、本当に命を落とす人まで出たといったことが繰り返されています。本当に何も変わらないのかというふうに思わざるを得ません。
特に、いわゆる人質司法ですが、自白の強要はもちろんですけれども、早く出たいがためにほかの人を陥れる供述を強要する道具にもなっているということは、私の事件のときもそうでしたけれども、プレサンスや五輪談合でも同じことが行われていて、本当に早くこの状況を何とかしてほしい、これは裁判官の方にも申し上げたいと思います。
私がこういう経験をしたということもあって、事件の関係者、いろいろな事件の関係者にお目にかかることがよくあるんですが、皆さんが全く同じことを私に言われる。自分が事件に巻き込まれてみて初めて、この国の刑事司法というのはこんなことになっていたのか、それまで全然知らなかったということです。これは私が当時感じたことと全く同じです。こういうことが続いていくと、本当にこの国の刑事司法に対する信頼が失われていくのではないかというふうに思っています。
こういったことを踏まえて是非私がお願いをしたいのは、まずは、全ての取調べの録音、録画、全ての事件、そして在宅や参考人の取調べも録音、録画をしてほしいということです。これがないと、何があったかというのを確認をすることができないわけですから、証明をするすべがないわけですから、まず、録音、録画の義務化の範囲を拡大をしてほしいというふうに思います。
それから、録音、録画があってもひどい取調べが行われているということがだんだん明らかになってきています。これはなぜかといえば、表に出なければいい、ばれなければいいということがあるわけです。今の仕組みですと、例えば、調書を採用するかどうかというようなことが、調書の請求がなければ、ひどい取調べだったと訴えて、それを明らかにしていくすべがないわけですから、ひどい取調べを受けた、そういうことがあったといったときに、取調べの状況がきちんと検証してもらえる、見てもらえる、表に出してもらえるという仕組みを是非入れてほしいと思います。
また、皆様からもお話が出ていますが、人質司法をなくすための仕組みの強化を是非お願いをいたします。
刑訴法が改正をされたときに、録音、録画の仕組みは不十分なものではないかという議論は当時からありました。そのために、改正法を作ったときに附則の九条で三年後の見直しを決めております。このときに、附則では、取調べの録音、録画については、「被疑者の供述の任意性その他の事項についての的確な立証を担保するものであるとともに、取調べの適正な実施に資することを踏まえ、」、制度の在り方について検討を加えるというふうに言われております。
これを受けて、実は、二二年に法務大臣が、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を設置をしてくださいました。この協議会の設置から三年近くがたとうとしているのですが、残念ながらやっと一巡目の議論が終わったというところで、私も役人ですから余りこういう言い方はしたくはないんですが、本当に熱心にやっていただいているとは言い難いゆっくりとしたペースで進んでおりまして、しかも、一般有識者、市民の参加がなく、かつ、マスコミの傍聴もできないというような状況で、申し訳ないですけれども、法務省の消極的な姿勢を非常に憂慮をしているところでございます。
これだけ問題事案が次々と発生をしております。これ以上この問題が放置をされないように、是非立法府においてリーダーシップを取っていただきまして、法改正、運用の改善を早期に実現をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。(拍手)
9
西村智奈美(立憲)
ありがとうございました。
次に、櫻井参考人にお願いいたします。
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10櫻櫻井鼓追手門学院大学心理学部教授
皆様、こんにちは。追手門学院大学心理学部の櫻井鼓と申します。
私は、公認心理師、臨床心理士で、専門は犯罪心理学になります。本日は、このような場をいただきましてありがとうございます。
私は、二十一年間、警察の心理職を務めまして、性加害も含む非行少年への援助、そして犯罪被害者等への支援に携わってまいりました。現在では、大学で引き続き犯罪被害者等の支援ですとか研究、そして捜査機関依頼の心理鑑定を行っております。ですので、犯罪被害に携わり始めまして二十七年になります。今日は、自験例ですとか研究を基に、性被害を受けた子供の刑事手続に関する課題につきまして意見を…
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西村智奈美(立憲)
ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
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