沖野眞已東京大学大学院法学政治学研究科教授

2025年5月9日・第217回国会 衆議院 国土交通委員会 第13号(外部サイト、新しいタブで開きます) の 23 番目の発言(外部サイト、新しいタブで開きます)(全 107 発言)

ありがとうございます。

まず、財産権の保障の観点から問題があるという点につきましてですけれども、この点はまさにそのとおりだろうと思っております。

私が理解するところでは、先ほども申し上げたところですけれども、損害賠償債権は、契約に基づく契約不適合を理由とする損害賠償債権であり、契約当事者が持つもの、債権者が持つものであります。それを、目的物である所有権という物権を移転したことによって、何の合意もなく当然についていくものではないということになりますので、当然承継は、それを意思に基づかず、強制的に移転させるということになります。

それは、一般論といたしましても、金銭債権を持っている人が、私が反対だと言っても、当然にほかの人に移さなければならない。更に言うと、両当事者が、それはやめましょうと言ってもできないという仕組みを要求するわけですので、それは一般的に、まさに財産権の保障としてどうかということがあります。

本日の御議論を聞きまして、より明確になったように思ったんですけれども、譲受人あるいは旧区分所有権者の財産権を侵害することは問題はない、むしろ修理を実現するためにはそのぐらい踏みつけてもいいんだという御議論だとすると、それはやはり正当化が非常に困難ではないかというふうに思っているところであります。

それから、今回、中野先生が第十六回の議事録を出してくださって非常にありがたいと思いましたけれども、この問題は、むしろ第十四回及び第十五回において非常に多く議論もされておりますので、御紹介としましては、むしろそちらも御覧いただきたいのでございます。

その中において、例えば、譲渡がされる場合というのは様々な場面がございます。典型的には、まだ欠陥なんかが分からない状態で、ちゃんとしたものだとして譲渡をしたところ、実はその後分かった、じゃ、損害賠償債権はどうなるのかというような話のときには非常に分かりやすいと思うんですけれども、そういう場合ばかりではございません。既に欠陥が明らかになって、修理をするのか損害賠償なのかとかいう話になっているところで譲渡をしたということもありますし、さらには、放っておくと危ないのでとにかく補修してしまおうというので補修した後、譲渡するということもございます。そのときに、しかし、損害賠償債権がなくなるわけではございませんので、損害賠償はできるわけであります。

そういう様々な場面がある中で、譲渡契約の当事者の合意に委ねることもなく強制的に移転させるということが本当にいいのかという問題がありますし、さらには、欠陥が分かった段階で売らざるを得ないということであると、果たして、損害賠償債権自体を奪われるだけではなくて、適正に区分所有権を譲渡できるかという、その部分における財産権の問題というのも指摘されております。

ですから、多様な場面を考えて規律を設ける必要があるということでございます。必要性があるという場面があるとしても、それだけを念頭に規律を置くということに対しては慎重であるべきだということになります。

しかし、放っておいていいのかというのは一方で問題で、財産権の侵害になっても、それを上回る政策判断というのがあり得ないのかということでございますけれども、政府案の下におきましても、これは齊藤先生がお話しになったところですけれども、規約で書いておくということは考えられるわけで、別段の意思表示については、別段の意思表示はしないという形で規約を定めれば、後で抜ける人も既に拘束されている状態ですので、及んでいくと考えられます。

それから、損害賠償債権そのものをどうするかという問題がございますけれども、ここは実は解釈の余地があるところではございますけれども、やはり、共有物の管理に関して、管理費をどうするか、修繕の積立金なり修繕費をどうするかという問題がございまして、その原資にこれを充てるというような規約の定めをすることで、管理の問題として引きつけて規定することもできるんじゃないか。

直ちにそれをやればいいというのではなかなか進みませんので、モデルというか、標準管理規約に書いていただければ、こういう形にすればできるんだということが明らかになって、進むのではないかというふうに考えられます。さらに、私、個人的には、区分所有権の譲渡契約のモデルなどについても考えていった方がいいんじゃないかというふうに思っておるところです。

それから、さらに、もしも、しかし、債権があるということで非常に濫用的な行使をする、吹っかけるとか、そういうことに対しては権利濫用という規律もございますので、政府案の下でも一定の配慮は十分される、また、そのための次のステップをこそ取っていただきたいというふうに考えているところでございます。標準管理規約の用意とかということを考えております。

以上でございます。

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