立憲民主党の山花郁夫です。
まず、学問の自由、大学の自治に関する問題を取り上げたいと思います。
この問題に関しては、京大事件、滝川事件が有名です。
一九三三年、文部大臣が京都大学総長に対し、法学部の滝川幸辰教授を辞めさせるように申入れをしたことに端を発します。京都大学法学部教授会は、学問的研究の成果として発表された刑法学上の所説の一部が政府の方針と一致しないという理由で教授が退職させられるようでは、学問の真の自由は阻害され、大学はその存在の理由を失うに至るとして、反対意見を提出しましたし、京大総長もまた、文部大臣の要求には応じませんでした。そこで、文部大臣は滝川教授を休職にしました。休職といっても、当時の休職というのは事実上の免官であります。
このときの文部大臣の行為が合法であったかどうかについては、議論があります。明治憲法には学問の自由に関する規定がなかったわけですし、休職処分については、手続的には瑕疵はなかったのかもしれません。しかし、政治権力によって、大学の教授をその学問的所説のみの理由に基づいて事実上免官するということは、学問の自由に対する侵害であったというほかありません。
京大事件などの教訓から、学問の自由を十分に保障するためには、大学の人事に関して政府が介入しないということが求められます。最高裁も、大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている、この自治は、特に大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任されるとしています。
ところで、菅首相、当時ですけれども、二〇二〇年秋、日本学術会議が新会員候補として推薦した候補者百五名のうち、安保関連法に批判的と言われた六名を除外して任命する異例の決定をしました。
この問題については、委員の任命は内閣総理大臣が行うのだから、任命をしないことも適法であるという見解に対して、いやいや、任命という用語が用いられているが、これは形式的任命であって、拒否はできないのだということが争われています。法律制定の経緯からいって後者が正しいと私は思うのですけれども、この議論は、京大事件における休職処分の適法性の問題に似ていて、そこが本質的な問題ではないように思われます。
大学の自治が保障されるべきなのは、大学という組織だからなのではなく、学問の自由が保障される研究者による組織だからだとすると、学術会議という団体にも、人事などが政府によって干渉されないということが憲法二十三条によって保障されると考えられます。
ここに、干渉というのは、自治が認められる趣旨からすると、メンバーの解任という積極的な介入だけではなくて、任命拒否という消極的な介入も干渉と評価されますから、今回の任命拒否というのは、憲法が学問の自由を保障した趣旨に反すると考えるべきだと思います。
なお、イギリスと異なって、ドイツ型の大学とは官立大学を基本としているため、資金提供者である国、つまり政治から介入を受けやすいことから、学問の自由を独立した条文として規定しているということに鑑みると、政府が財政民主主義や憲法十五条の公務員の選定、罷免権などを理由に挙げていることは適切でないと考えられます。もし財政民主主義などの方が優越する価値であるとすると、京大事件やあるいは天皇機関説事件も正当化されない理屈であることは指摘しなければならないと思います。
次に、性同一性障害の特例に関する法律三条一項四号が憲法十三条に違反するという最高裁大法廷決定が令和五年十月二十五日に出されましたが、今日現在、いまだ改正がなされていません。
第三者所有物没収事件については、違憲判決から半年後に、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法が制定され、薬事法適正配置規制は、違憲判決の後、一か月足らずで、議員提案で適正配置条項を削除する法律が制定され、森林法分割規定は、違憲判決の、一か月程度で、森林法百八十六条を削除する改正法を成立させ、平成十四年九月十一日に出された郵便法違憲判決は、同年十一月二十七日に改正法が成立し、在外日本人選挙権制限や国籍法違憲判決の後も、半年程度で改正が行われています。
違憲判決が出されてから一年以上放置されるというのは極めて異例であり、早急に法改正をすることが必要であると考えられます。
また、同性婚を法的に保障しないことが憲法違反であるという高裁判決が続いており、最高裁の判断も時間の問題ではないかと推測されます。同性婚に対する法的整備は喫緊の課題であると考えます。
なお、本日の憲法と現実の乖離というテーマで取り上げるべき課題について党内で意見を求めたところ、刑事手続上の人権については憲法に詳細な規定があるにもかかわらず人質司法になっているではないかという問題であるとか、憲法二十五条と生活保護の問題、労働基本権と労働組合の組織率の低下の問題、ひとしく教育を受ける権利と経済格差の問題、唯一の立法機関性と政省令委任の問題や、地方自治など、枚挙にいとまがないほどの課題の提起がございました。
当憲法審査会は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うことも重要な権限となっています。今後、こうした課題を憲法審査会のテーマとして取り上げていただきますことを各会派にお願いをして、発言とさせていただきます。
1
枝野幸男(立憲)
これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。
本日は、憲法と現実の乖離について自由討議を行います。
この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。
それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。
発言時間は七分以内となっております。
質問を行う場合、一度に答弁を求めることができるのは二会派までとし、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて七分以内となりますので、御留意願います…
この発言のページ
2
船田元(自民)
自由民主党の船田元であります。
今国会も終盤となってまいりましたが、憲法審査会の運営がこれまで比較的計画的に進められております。このことについては安堵をしております。憲法改正原案の策定にはまだ時間を要しますけれども、それに向けての歩みは着実に前進していると考えております。秋の臨時国会においても更に前に進めていきたいと考えております。
さて、本日のテーマであります憲法と現実の乖離については、憲法審査会の生みの親でもあります中山太郎先生が度々言及されていた、いわゆる三つの九条を掲げなければいけません。すなわち、九条二項と自衛隊の関係、七十九条と裁判官の報…
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3
枝野幸男(立憲)
次に、山花郁夫さん。
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- (上の発言)
4
山花郁夫(立憲)
立憲民主党の山花郁夫です。
まず、学問の自由、大学の自治に関する問題を取り上げたいと思います。
この問題に関しては、京大事件、滝川事件が有名です。
一九三三年、文部大臣が京都大学総長に対し、法学部の滝川幸辰教授を辞めさせるように申入れをしたことに端を発します。京都大学法学部教授会は、学問的研究の成果として発表された刑法学上の所説の一部が政府の方針と一致しないという理由で教授が退職させられるようでは、学問の真の自由は阻害され、大学はその存在の理由を失うに至るとして、反対意見を提出しましたし、京大総長もまた、文部大臣の要求には応じませんでした。そこで、文部大臣は滝川教授を休職にしました。休職といっても、当時の休職というのは事実上の免官であります。
このときの文部大臣の行為が合法であったかどうかについては、議論があります。明治憲法には学問の自由に関する規定がなかったわけですし、休職処分については、手続的には瑕疵はなかったのかもしれません。しかし、政治権力によって、大学の教授をその学問的所説のみの理由に基づいて事実上免官するということは、学問の自由に対する侵害であったというほかありません。
京大事件などの教訓から、学問の自由を十分に保障するためには、大学の人事に関して政府が介入しないということが求められます。最高裁も、大学における学問の自由を保障するために、伝統的に大学の自治が認められている、この自治は、特に大学の教授その他の研究者の人事に関して認められ、大学の学長、教授その他の研究者が大学の自主的判断に基づいて選任されるとしています。
ところで、菅首相、当時ですけれども、二〇二〇年秋、日本学術会議が新会員候補として推薦した候補者百五名のうち、安保関連法に批判的と言われた六名を除外して任命する異例の決定をしました。
この問題については、委員の任命は内閣総理大臣が行うのだから、任命をしないことも適法であるという見解に対して、いやいや、任命という用語が用いられているが、これは形式的任命であって、拒否はできないのだということが争われています。法律制定の経緯からいって後者が正しいと私は思うのですけれども、この議論は、京大事件における休職処分の適法性の問題に似ていて、そこが本質的な問題ではないように思われます。
大学の自治が保障されるべきなのは、大学という組織だからなのではなく、学問の自由が保障される研究者による組織だからだとすると、学術会議という団体にも、人事などが政府によって干渉されないということが憲法二十三条によって保障されると考えられます。
ここに、干渉というのは、自治が認められる趣旨からすると、メンバーの解任という積極的な介入だけではなくて、任命拒否という消極的な介入も干渉と評価されますから、今回の任命拒否というのは、憲法が学問の自由を保障した趣旨に反すると考えるべきだと思います。
なお、イギリスと異なって、ドイツ型の大学とは官立大学を基本としているため、資金提供者である国、つまり政治から介入を受けやすいことから、学問の自由を独立した条文として規定しているということに鑑みると、政府が財政民主主義や憲法十五条の公務員の選定、罷免権などを理由に挙げていることは適切でないと考えられます。もし財政民主主義などの方が優越する価値であるとすると、京大事件やあるいは天皇機関説事件も正当化されない理屈であることは指摘しなければならないと思います。
次に、性同一性障害の特例に関する法律三条一項四号が憲法十三条に違反するという最高裁大法廷決定が令和五年十月二十五日に出されましたが、今日現在、いまだ改正がなされていません。
第三者所有物没収事件については、違憲判決から半年後に、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法が制定され、薬事法適正配置規制は、違憲判決の後、一か月足らずで、議員提案で適正配置条項を削除する法律が制定され、森林法分割規定は、違憲判決の、一か月程度で、森林法百八十六条を削除する改正法を成立させ、平成十四年九月十一日に出された郵便法違憲判決は、同年十一月二十七日に改正法が成立し、在外日本人選挙権制限や国籍法違憲判決の後も、半年程度で改正が行われています。
違憲判決が出されてから一年以上放置されるというのは極めて異例であり、早急に法改正をすることが必要であると考えられます。
また、同性婚を法的に保障しないことが憲法違反であるという高裁判決が続いており、最高裁の判断も時間の問題ではないかと推測されます。同性婚に対する法的整備は喫緊の課題であると考えます。
なお、本日の憲法と現実の乖離というテーマで取り上げるべき課題について党内で意見を求めたところ、刑事手続上の人権については憲法に詳細な規定があるにもかかわらず人質司法になっているではないかという問題であるとか、憲法二十五条と生活保護の問題、労働基本権と労働組合の組織率の低下の問題、ひとしく教育を受ける権利と経済格差の問題、唯一の立法機関性と政省令委任の問題や、地方自治など、枚挙にいとまがないほどの課題の提起がございました。
当憲法審査会は、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関する基本法制について広範かつ総合的に調査を行うことも重要な権限となっています。今後、こうした課題を憲法審査会のテーマとして取り上げていただきますことを各会派にお願いをして、発言とさせていただきます。
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枝野幸男(立憲)
次に、阿部圭史さん。
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6阿阿部圭史(維新)
日本維新の会の阿部圭史です。
憲法九条をめぐる問題には、二つの乖離がございます。一つは安全保障環境との乖離、もう一つは国際法環境との乖離です。
まずは、憲法九条と安全保障環境との乖離について。
本年は戦後八十年。我が国を取り巻く極東の安全保障環境は分岐点を迎えようとしています。我が国は、力による現状変更をいとわない核保有国に囲まれ、周辺国による領海侵入及び領空侵犯が相次ぎ、我が国の抑止力の増強及び日米同盟の深化が喫緊の課題となっています。
一方、戦後八十年たってなお、沖縄を始めとする当時の占領地域はいまだに在日米軍基地として使用され、その約七〇%…
この発言のページ
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枝野幸男(立憲)
次に、浅野哲さん。
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